ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
少人数・習熟度別授業

広島県深安郡神辺町立 神辺小学校
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考える力を引き出す「基本コース」
 黒板には3つの式。子どもたちが考えた2.7÷0.6の答を確かめる式だ。
 「では、電卓で確かめてください」先生の声にいっせいにキーをたたく子どもたち。「あれーっ、違う!」「一つ目が合っとるけど、三つ目も合ってる!! なんで?」間違いや疑問をためらいなく口にする子どもたちのようすは実に明るい。
写真1 基本コース
▲写真1 基本コース。みんなの考えを電卓で確かめる。「あれーっ、違う」

 少人数・習熟度別授業の5年算数。「基本コース」で学ぶ子どもは12人(クラスの3分の1)。今日は「あまりがある小数のわり算」の授業だ。子どもたちは、先生とのやりとりを楽しみながら、自分の考えを深めていく。
 「どのように確かめればいいかな?」先生が取り出したのは水色のリボン。黒板に貼った2.7mのリボンにものさしを当て、0.6mを測る。
「大切なリボンだけど、勉強のためだから今日は切ってしまいます」
実際に切り取り、0.6mのリボンが4本取れて、あまりが0.3mであることを確かめる。
写真2 基本コース
▲写真2 基本コース。具体物で確かめる。「大切なリボンだけど切ってみよう」

 みんなの考えをまとめたあと、1、2問のミニプリントで学習内容を確認して授業は終わった。
図1 基礎コースの問題と板書
▲図1 基礎コースの問題と板書

 「基本コース」の目標は、「教科書を確実に理解する」。一人ひとりが考えたり話し合ったりする時間をきちんととりながら、授業はゆっくりと進む。さらに、考えるきっかけとなるように、先生は具体的な教材を準備し、働きかけていく。日常の指導と連携し、一人ひとりの子どもたちの表情やつぶやきを授業に生かすために、基本コースは学級担任が担当する。
 コース選択は単元ごとに行われるが、どのコースを選ぶかは、単元前のプレテストの結果から、担任のアドバイスをもとに子どもたち自身が決める。なかには、テスト結果に関係なく「担任の先生がいい」という理由で「基本コース」を選ぶ子どももいるという。
自ら取り組む力を伸ばす「発展コース」
 「発展コース」の授業は、学級と同じ階の少人数教室で行われる。人数は24人。授業のはじめに、この時間の課題を確認し、先生が示した問題に取り組む。ここまでは「基本コース」と同じだ。違いは、このあとのスピードと先生のかかわり方だ。
 先生の問いかけに、どんどん手が挙がる。教室の前に出て、自分が考えた解き方を説明する子どもたち。先生は、発表を整理する進行役と、全員に到達してほしい考え方を図や表で確認するまとめ役をするだけで、授業はテンポよく進む。
写真3 発展コース
▲写真3 発展コース。自分の考えを説明する。「○○さんと似ていて~」

 教科書の類似問題に少し取り組んだら、評価のためのミニプリントが配られる(図2、3)。
図2 ミニプリント
▲図2 評価のためのミニプリント。「表現・処理」や「知識・理解」の目標についてまとめたあとに評価する

図3 ミニプリント
▲図3 「関心・意欲・態度」や「思考・判断力」の評価の場合は授業の導入で使われることも

 後半は自分で選んだ課題に時間をかけて取り組む。ミニプリントを先生に提出したあとは、計算ドリルや神辺小オリジナルの「基礎・基本定着プリント」などの基本問題に取り組んでいる子どもたちが多い。
 基本問題が早く終わった子どものために、教室の後ろには十数種類の発展問題プリントが用意されている。現在学習中の単元と一つ前に学習した単元の発展問題だ。どの子にも達成感、充実感のある内容を用意する姿勢は徹底している。
 先生は教卓でミニプリントを採点しているが、できていない子どもがいればすぐに戻し、できるまで個別に指導する。子どもの活動を中心にしていても、課題が身についていないときには、徹底した指導に変わる。一見クールな発展コースの授業にも、一人ひとりを見守る姿勢は貫かれている。
図7 基本コースと発展コースの授業展開例
▲図7 基本コースと発展コースの授業展開例

 
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