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教師の相互啓発により学習の質を保証する

静岡県袋井市立 袋井北小学校
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夢や目標をもつための基礎力を育てたい
 袋井北小学校の学校教育目標は「ゆめいだき、共に励む子」。重点目標として「ゆめ・望みを抱く『問いもつ子』」、「ゆめ達成に向けて夢中になる『燃える子』」、「ゆめの成就に喜ぶ『笑顔の子』」の三つを掲げる。『問い』の「と」、『燃える』の「も」、『笑顔』の「え」をとり、「ともえの子」づくり。校章の三つ巴の印にちなんだ目標だ。
 校長の加藤數三先生は、「子どもたちはとても素直で、話をきちんと聞き、与えられた課題に真面目に取り組むことができます。ただ、自分の願いや思いを前に出すのが苦手なところがある」
と言う。願いや思いは、夢、目標につながる。夢をもち、目標に向かって努力する人間になってほしい。そういった思いが、目標に込められている。
「夢をもつには、自ら学び、自ら考える力が必要。このためには基礎的な学力がなくてはならないでしょう。また、自分の思いや願いを表現できるうれしさは、自ら学ぶ意欲につながります」(加藤校長)
 教育課題の柱は、「基礎・基本の定着」と「表現力の向上」となった。
音読バトルで基礎定着と表現力の向上
 表現力の向上の手段として、同校では音読・朗読指導、スピーチの場の設定、日記指導を掲げている。表現力向上の最終目標は、相手を意識しながら発信すること。声に出して読む力を身につけることに始まり、六年生では小学校の思い出やこれからの夢を「卒業論文」にしてみんなの前で発表する。
 今回は五年生の国語の授業で、説明文「海にねむる未来」の単元の最終時(九時間目)を見学した。
 授業の前半は、子どもたちが自分の考えを述べる練習の時間。教科書の内容に沿って、文中に登場する科学者に何を研究してもらいたいか、なぜそう思うのか、佐野和嘉子先生が問いかける。前時に子どもたちは同じテーマについて話し合い、ノートにまとめているので、それをもとに発表する。手を挙げるのをためらっている子には、佐野先生が声をかけて発表を促す。
 授業の後半は音読発表の時間。うまく音読するには漢字の知識や内容の理解が必要だから、基礎学力の定着に有効だ。また、人前で声に出して読むことは、自分の意見を述べるための訓練にもなる。問題は、読む練習を続けられるかということ。ここには子どもたちが夢中になって音読するための仕掛けがあった。
「音読バトルやります」と佐野先生が言うと、子どもたちの表情がパッと明るくなる。その名の通り音読の勝負。学習した単元を教室の前に出て音読する。間違えたり、途中で引っかかったりせずに最後まで読み終えたら勝ちというルール。佐野先生は、「はっきりした発音」「聞きやすい声の大きさ」「表情をつける強弱・速さ」に気をつけて音読するように促す。
 この日は団体戦だ。五、六人のグループでページを分担して読み上げる。分担といっても、一番手が早々と間違えてしまったら、二番手はその続きを読むことになるから全ページ練習しておかなければならない。勝ちたいという闘志がみなぎって、子どもたちは真剣そのもの。順番を待つ他のグループは、音読を聞きながら、集中して教科書の文字を追う。音読している子がひと言ひと言間違えずに読んでいるかをチェックしているのだが、自分が読むときのイメージトレーニングにもなっている。
 頑張っているだけに、勝てなかった子どもは悔しい。佐野先生は、負けてしまった子どもへのフォローを欠かさない。「休み時間も頑張って練習していたね」「前回よりも長く読めたね」先生のこうしたひと言で、子どもは努力を続けることができるのだろう。
 子どもたちが毎日書いて担任に提出する日記には、音読バトルについて「つっかからないように毎日本読みをしています」「がんばってよかったと思いました」といった言葉が並ぶ。保護者記入欄には「音読バトルを頑張るといって毎日頑張って読んでます」など、家庭での努力を伝えるコメントもある。日記は、子どもたちにとっては日々の生活のなかで自分が感じたことを書く振り返りの場。保護者と教師にとっては、家庭と学校での子どもの様子を知るツールでもある(図1)。
▲教室の前方に並んで、音読バトルに挑戦する

▲図1 子どもたちの毎日の日記から音読バトルの感想を抜粋したもの。保護者の反応からも家庭での頑張りが見えてくる

授業を評価しあって、質の向上をめざす
 音読バトルのようなユニークな指導法が生まれるのはなぜなのか。
 見学した国語の授業は校内研修の場でもあった。先生方が続々と見学にやってくる。教室の入り口には、授業の感想を書くためのプリント(図2)が置いてあった。見学者は、授業内容や指導法について意見や感想を書き込み、授業をした教師に渡す。ときには教師同士で話し合う。すべての教師が年に一度は研修のための授業を行うため、毎月二、三回はこういった研修が行われることになる。教師同士の合言葉は「授業で勝負!」だ。
 教務主任の角川重晴先生は言う。
「それぞれの先生が指導法を工夫しています。よい指導法は共有し、うまくいかなかったら今後どのようにしていったらいいか一緒に考える。意見ははっきりと言い合います。自分の考えを主張できる子どもを育てようという教師が、意見を言い合えないのはおかしいでしょう?」
 教頭の小松洋先生も、
「培ってきた指導法を批判されることもありますから、研修は教師にとって非常にシビアな場です。本校の先生方はタフで、へこたれずに努力してくれるのです」
と言う。一人ひとりの教師が授業をオープンにし、教師同士で指導内容を評価し合うことにより、授業の質が高まっていくようだ。
 今年度はこうした努力の成果を把握するため、児童、保護者、教職員による学校評価の試みも充実させる。秋にアンケートを行い、結果を次年度の計画に反映させる予定だ。 「これからの教育現場には品質保証という考え方が必要でしょう。学校での学びの内容を保証するために、今後も取り組みを続けなくてはならないと考えています」(加藤校長)
▲図2 参加した先生が授業の感想を書くためのプリント。研究授業のある教室の入り口に置いてあり、気づいたことなどを記入して、授業者に渡す

 
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