ベネッセ教育総合研究所
特集 豊かな学力の確かな育成に向けて
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四つの学力を低・中・高学年でどう育てるか
 いまの子どもの問題で私がいちばん気になるのは、学習意欲が国際的にみても最低レベルにあることと、学校外学習の時間が減ったことです。これは、いわゆる学力低下問題よりもずっと深刻です。
 学習意欲を喚起させるポイントは次の四つ、(1)知的好奇心、(2)有能感、(3)自己決定の機会、(4)有用性(勉強したことは役に立つという実感)、です。
 (1)は子どもが不思議だ、面白いなと感じる授業を地道につくるなかから生まれます。(2)は、「やればできるという感覚」で、漢字や計算など答えがわかって伸びが実感できるものは有効です。特に(4)は重要で、「教科の学習は、自分が課題を持って取り組もうとしたときに役に立つ」という実感を持たせることから生まれます。ただ、自分の課題を持たせるためには、別のプログラムが必要で、それを促すものとしても「総合的な学習」があるのです。
 私が長年かかわってきた埼玉県越谷市立越ヶ谷小学校では、テーマに基づいた共通体験を3年生から積み上げ、グループによるテーマ研究に移り、5年生になってから個人テーマを追究させました。課題づくりの過程に無理がなかったので、6年生では全員が個人の自由テーマでミニ卒業研究をやり遂げていました。
 「総合的な学習」の小学校での目標は、中学校に入ったとき、興味を持ってテーマをつくれる段階までは持っていくこと。しかし、「小学生だから自由に…」と放っておいては、課題や計画をつくる力はつきません。段階的に育てることが大切なのです。
 そこで、基礎も含めて、四つの学力を低・中・高学年でどのように育てたらいいかを、の通り考えてみました。
図
▲表 4つの学力と発達段階との関係
 基礎Aは低・中・高学年すべてで、絶対つけてほしい。基礎Bは、低学年ではそんなに無理する必要はないのですが、中学年以降は絶対必要。さらに、発展は高学年で、実践は中・高学年からは絶対つけていきたい。
 なお、発展的な学力を育てるとき、あまり教室内だけで完結しないほうがよいと思います。社会に目を向けて、例えば国語なら漢字検定のようなものを目標にして、自信をつけさせるのが、有能感、有用性につながると思います。
 これからの教師は、自分で教えることももちろん大事ですが、教科学習も社会との接点で考えていくことが大事だと思います。そのために何を取り入れ、どのような人にかかわってもらうかを考えてコーディネートする。そのような力も求められていると思います。


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