ベネッセ教育総合研究所
特集 教師の「授業力」向上のために
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面白い授業をつくるためには
秋田 今泉先生は、面白い授業ということを常に考えていらっしゃいます。具体的には、どのようにすれば、面白い授業をつくっていけるのでしょうか?
今泉 教師が「面白い」と思ったことを教材化していくことです。例えば、算数の体積の授業で、何か身近にあるものから体積を求めさせたいと思いました。そこで、ホームセンターに行ったら、プラスチックの鎖が見つかって、ああ、これなら面白くやれるとわくわくしながら授業に臨んだのです。子どもに1メートルほどの鎖を見せて、「これは何立方センチメートルでしょう?」ときいたら、案の定、「先生、そんなのできないよ」と。でも議論していくうちに、「四角い箱に水を入れて、そこに沈めて増えた水かさを測れば、体積が出せるじゃないか」と言う子が現れたのです。そして、りんごやレモンなども次々試してみて、最終的にどんなものにも体積があって、それは測定可能なのだという体積の本質的な意味の学習にたどり着いたのです。
 そのように、ものを点で見るということは、例えると針で刺すようなもの。針は鋭いから深く刺さるのであって、太い棒のようなものでは刺さりませんからね。学習というのは常にそういう問題をはらんでおり、きわめてリアルな具体的なものを点として持ち込み、そこから世界をのぞいていくことを私は意識して授業をしています。
秋田 点から問いが立ってくるからこそ、深い学びができますが、同時に時間もかかります。限られた時間でどのように配分を考え、組み立てていかれますか?
今泉 大事なのは、どの単元・内容が重要なのかをしっかりと見極めることです。同時に、あまり重要でないと判断したところは軽く扱っていくということをしなければなりません。
 もう一つは、単元や教科の「つながり」を意識すると、学びが構造化し、比較的短時間で学べるのです。私は以前から、教科こそ総合的な視点で学ぶべきだという考えを持っています。一つの学びが理科とつながったり、歴史とつながっていくという学習の組み立てをすることで、子どものなかでバラバラだった知識が一つにつながっていく。学びと生活をつなげるパイプも見えてくる。例えば、教科書通りに進めると20時間かかるところが、組み替えて学習すれば10時間でできるということはたくさんあるのです。
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▲今泉先生の“出前授業”。04年8月、高知県室戸岬小学校で
実施された4年生特別授業「人権について考える」での一場面


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