ベネッセ教育総合研究所
特集 教師の「授業力」向上のために
三宅貴久子
みやけ・きくこ●教職歴25年。現在、5年生を担任。ITの積極的な活用、そこから広がるネットワークを駆使した先進的な授業には定評がある。著書に『子ども米レンジャーと旅する米米ワールド』(高陵社書店・伊藤秀一先生との共著)がある。
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 環境や子どものようすが変化するなかでも、先生方は、さまざまな工夫をもとに授業を実践している。ここでは、現場の第一線で活躍する二人の先生の「目指す授業」とその実践を紹介する。

私の目指す授業
「ひらめき」「フットワーク」「ネットワーク」が信条


三宅貴久子 岡山県 岡山市立津島小学校教諭
──目指す授業は?
 子ども自身が「なぜ」という問いをどんどんつくり出し、主体的に追究活動をしていける授業です。そのために、私は「ひらめき」「フットワーク」「ネットワーク」の三つを信条としています。
 「ひらめき」とは、日常のなにげない出来事にふっと感じた疑問や発見を、授業に結びつけていくこと。思いついたら、すぐメモします。「フットワーク」とは、子どもと一緒に動き、自分の目で見て確かめること。教材研究のために、遠路、取材に出かけることもありますね。「ネットワーク」とは、教師仲間だけでなく、専門家や地域の人など外部人材のこと。助言を求めたり、ときには授業で話してもらうこともあります。例えば、道徳で、掃除をテーマにしたら、学校の周りでいつも清掃をしてくださっている方に教室に来てもらい、話を聞く。すると、子どもたちは掃除がなぜ必要かを納得するのです。実社会の人の話は、学びをより豊かなものにしてくれます。

──ITを授業に積極的に取り入れている理由は?
 ITは道具。それ自身に目的はありませんが、授業の幅を広げてくれます。導入のきっかけづくりでHPを見たり、前時の要点をプレゼンテーションソフトでまとめ、復習に使うこともあります。テレビ会議による交流学習も行います。
 最近は、IT教材だからこそ身につく「基礎・基本」もあるのではないかと、その可能性を探っています。例えば作文ソフト。これを使って、文章の構成の仕方を指導しました。何割かの子どもは、文章を書くことへの苦手意識がなくなったようです。

──授業で心がけていることは?
 これからは、思考力が大切です。表現力の重要性はよく言われますが、その前に思考力が育っていなければ、表現もできません。表現と思考力は裏表の関係。言葉には考えた分だけの深さが表れます。
 例えば「三宅先生はこわい」と言うのなら、「どのように」こわいのか。授業を聞いて「わかった」と言うけれど、「何がどのようにわかったのか」。そこを私は問い直します。問うことで、もう一歩深く考えさせるのです。私の授業は「問い」の連続。子どもはへとへとに疲れるようですが、学びとは、本来それほどシビアなものなのではないでしょうか。

──授業力を高める工夫は?
 いま、私は大学院に通っています。「ルーブリックの作成と運用に関する実践的研究」が研究テーマです。これまで、実践から理論化をしてきましたが、現在はその逆に挑戦しているのです。実際、理論で学ぶと、教育を俯瞰的にとらえることができ、新たに気づくことがたくさんあります。理論と実践を往復することで、感じている限界を突破できればいいなと思っています。
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▲子どもとは、常に真剣勝負。
「授業は、子どもの実態把握ができていないと失敗します。
どこが、なぜ、理解できていないのかを見極める目が必要ですね」


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