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木岡一明 国立教育政策研究所 総括研究官 きおか・かずあき●1956年生まれ。摂南大学専任講師・助教授を経て、97年に国立教育研究所(当時)教育経営研究部教職研究室長となり、2001年1月から現職に。専門は、教職論、学校評価論。「学校評価システムの構築に関する開発的研究(03~05)」の研究代表者ほか。編著は、『教職員の職能発達と組織開発』(教育開発研究所)ほか。 |
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第2部 視点 |
教師の授業力を学校集団のなかで どのように高めていけばよいか |
個々の教師に力量があっても、組織化されないと効果が発揮できなかったり、教師同士が連携していないために教師個人の力量が上がらなかったりすることがある。教職論がご専門の木岡先生に、一人ひとりの授業力を高めるために組織的に取り組む意義と具体的な方策を解説していただいた。 |
なぜ組織的取り組みが必要なのか |
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授業は教師の仕事の大部分を占めますが、教材づくり一つとってみても一人ではできないし、授業力も一人の力では伸ばしにくくなっています。かつてのような、スーパーマン・スーパーウーマン教師像は成り立たなくなっているのです。
一つ目の理由は、社会環境の変化です。生活様式や人々の考え方が激変し、科学技術も向上・発展、教えなければならない知識や技術の量がぐっと増えました。一人の先生がすべて教えられる時代ではなくなっているのです。
二つ目は、教員養成のあり方に起因しています。日本の大学の小学校教員養成課程では、全教科を広く浅く学びながら、特定の教科に関して深く学び、それによって中学・高校教員の免許も取れるというしくみになっています。そのため、小学校教師のアイデンティティは、どうしても深く学んだ特定の教科に置かれがちで、そうではない教科には自信を持って授業に臨めなくなる傾向があります。社会全体の教養・教育水準が上がっている現代では、教師よりもものを知っている保護者は少なくありません。そのようななかで、一人の教師が全教科同じ水準の授業をするのは難しいのです。
三つ目は子どもの変化です。少子化が進んだ現在では、きょうだいに揉まれる経験をしないまま小学校に入学する子が増えています。自己中心性から抜け出せない子どもたちと関係を結ぶのに、従来の経験や児童理解の知識では追いつかなくなってきている。このような理由から、個々の教師の教育力や授業力を、組織的に高める必要があるわけです(図1)。 |
▲日本の教師の教育力は高い。しかし、個々の力がかみ合っていない。環境適応 (なぜ・何を・いかに)の認知を教師間で共有(同僚性の構築)しなければならない。
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