ベネッセ教育総合研究所
特集 保護者の教育力を生かす学校づくり
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年間活動で全教員を巻き込み、教師の認識を変える
 活動も9年目を迎えた現在、半田史子校長が課題にあげたのが、教職員の異動が激しいなかでの活動の継続だ。
「私が赴任した03年度は8人、04年度は7人の教員が入れ替わりました」
 石川小は1学年単学級。その規模でこれだけの教師が入れ替わると、これまでの活動の積み上げが崩れてしまいかねない。毎年、異動してきた教員のための研修も行っているが、それでも理解を得られないこともある。 「ベテラン教師は、自分の力だけでも十分に授業ができます。それは素晴らしいことですが、一方で、それまでのやり方にこだわり、学社融合を取り入れるのに抵抗を感じる教師もいます」(半田校長)
 そこで石川小学校では、すべての教師に学社融合の活動にかかわってもらうため、4月に各学年担任と教科主任全員に年間の授業のなかから学社融合に生かせるものを洗い出してもらっている。それを受けて5月には、学習支援委員や学社融合コーディネーターと打ち合わせをし、課外活動も含めた大まかな年間計画(図3)を立て、学習支援委員とともに指導案を作成。毎年6月から本格的に授業支援や授業外活動の取り組みが始まる。
図表
▲図3 年間の授業のうち、学社融合を行うものの一覧(抜粋)。
( )内に該当の支援委員会が示されている
( )印は、高=高齢者福祉、国=国際理解、生=生活科、K=KLV、パ=パソコン(情報)、
音=音楽、書=楽書、す=すこやか、ま=学びタイム
 こうした取り組みを受けて、教師の意識改革に何より効果があったのが、学社融合の授業を受ける児童の生き生きとした姿だった。
 夏休み中の7月下旬から8月上旬にかけて毎年開催される「サマーキッズ」(写真1)では、多くの支援委員会の企画で、しおりやブックカバーを手作りしたり、お茶をたてたり、ペーパークラフトをつくるなどの体験活動が行われる。
写真
▲写真1「サマーキッズ」では、各支援委員会が
さまざまな体験活動を計画し、児童がさまざまな体験を行う
 夏休みなので、普段はほかの学級の学社融合活動を見ることができない教師も参加できる。そこで児童の生き生きとした姿を目の当たりにしたのをきっかけに、それまで学社融合に消極的だった教師が2学期から取り入れるようになったという。
 また、教師一人では伝えることのできない専門的な知識や技術、本物のよさを、地域の方々が教室に持ち込んでくれることで授業の幅が広がり、子どもたちの学習意欲や問題意識が目に見えて向上したことも教師の意識を変えた。
 例えば3年生国語の授業。韓国を舞台にした物語を扱うとき、「国際理解支援委員会」の支援で韓国の方が民族楽器の演奏を披露。本物にふれた児童たちは大いに喜んだ(写真2)。
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▲写真2 3年生国語で、教科書の素材に関連してゲストティーチャーを招いた。
韓国の楽器を演奏したり、民族衣装をつけたり、本物にふれた子どもたちは大喜び
「この学年はそれまで落ち着きがなく、担任は悩んでいたのですが、この授業をきっかけにまとまり始めました。子どもたちが自分から言い出して、11月に全校で行う学校の祭り『涵養まつり』でその楽器の演奏も行ったんです。先生も感激していました」(半田校長)
「音楽支援委員会」の活動では、04年度の4年生音楽の授業で、鍵盤ハーモニカのスタッカートとレガートの奏法を、専門家の的確でわかりやすい指導でしっかりと身につけた(写真3)。
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▲写真3 音楽ではプロの演奏家を招いての演奏や指導も行われる
 授業の終わりにリコーダーの合奏をしたとき、児童たちは、教師が何も言わなくても、正しいスタッカートの奏法で演奏していたという。
「教師がすべて自分でしたいという気持ちもわかりますが、大切なのは、子どもたち一人ひとりの学習のためにいちばんよい方法を考えることです」(半田校長)


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