特集 「考える力」を引き出す授業―理数教科からのアプローチ―

山鳥 重

▲神戸学院大・人文学部教授

山鳥 重

やまどり・あつし◎1939年兵庫県生まれ。神戸大大学院医学研究科修了。医学博士。専攻は神経心理学。長らく記憶障害、失語症、認知障害などの症状を抱えた脳機能障害の患者の臨床を行ってきた。神戸大医学部助教授、東北大医学系研究科教授等を経て、現在神戸学院大 人文学部教授。著書に『「わかる」とはどういうことか』(ちくま新書)、『脳からみた心』(NHKブックス)など。

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【インタビュー】
山鳥重
神戸学院大・人文学部教授

「わかった!」にたどり着く力を育てる

教育の現場では、子どもたちが「わかる」瞬間に出会うことを目標に、さまざまな手法による働きかけが教師によって行われている。では、「わかる」ために一生懸命考える子どもの頭の中では、何が起こっているのだろうか。そして、「わかる」に到達するまでの子どもに、教師はどのように寄り添っていけばよいのだろうか。脳の高次機能障害の臨床医でもある山鳥教授にきいた。

「わかる」とはどういうことか

 先生方は普段、子どもたちを前にして、「この子はわかっているのかな?」「わかっていないみたいだから、こんなふうに説明してみよう」などと、いろいろと苦労をしながら授業を進めていることと思います。それだけに子どもがわかってくれたときの喜びは、先生にとって格別なものでしょう。
 そもそも、「わかった」とはどういう状態なのでしょうか。テストをすれば、教えたことを子どもがわかったかどうかの判断はできます。しかし「わかった」に達するまでの途中経過は調べられません。
 私は長い間、神経内科の医師として、脳の高次機能障害の患者さんの治療やリハビリにあたってきました。脳の高次機能障害とは、脳梗塞や脳出血などで脳に損傷が生じ、認知がうまく働かなくなってしまう障害です。障害の現れ方は、損傷をした場所や程度によって異なりますが、簡単な図形の区別がつかなくなったり、近所から自分の家に帰れなくなるといったことが起きます。頭の働きが脳のどこかでブロックされてしまうために、「わかった」にたどり着けないわけです。
 頭の働きには形がありませんから、取り出して確かめることはできません。しかし、私たちはある課題に直面したときに、順序立てたり、組み立てたり、比較したり、分類したり、関連づけたりなど、いろいろな方法で答えを見つけ出そうとします。この答えを見つけるためにいろいろな方法を使うことを、「頭の働き」と呼んでいいと思います。


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