特集 「考える力」を引き出す授業―理数教科からのアプローチ―

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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国語や社会、理科でも推論する力を高める

 6年生の国語の単元「ガイドブックを作ろう」は、京都・錦市場での職業体験を振り返り、錦市場のガイドブックを作成する。
 「複数のガイドブックから共通点を探し、ガイドブックに必要な要素を抽出する。その作業には、帰納的に考える力が求められます」(竹浦吉乃先生)
 「考える種」には「得する情報」「わかりやすい」「楽しみ」など、ガイドブックを作るうえで必要な視点がまとめられた。
 それを理解させたうえで、先生は、「手元にあるガイドブックには何が書かれていますか」と問いかけ、グループで話し合わせる。やがて「おみやげの情報や宿泊場所は必要」「色分けやマークを入れるとわかりやすい」など、次から次へと意見が述べられた。教師は子どもの意見を引き出す“コーディネーター”に徹し、授業の主体はあくまでも子どもというスタイルだ。

図3
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複数のガイドブックを参考に、必要な内容を考えさせる。授業のスタート時には、ガイドブックを見ていく際の観点となる項目が「考える種」として板書される。
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写真1 さまざまなガイドブックを見て、共通点となるポイントを探す子どもたち。自ら考え、思考を組み立てていく
 さらに国語の授業では、05年度から、思考力を育成するもう一つのアプローチとして「読解力」を重視した指導を進めている。
 「単に説明文などを精読するだけでは、読解力の一部しか身につきません。本来の読解力とは、段落ごとの精読に加え、テーマを読み取り、それに対する自分の考えをまとめ、相手に伝えきるまでの能力と位置づけ、指導を強化しています」(中島校長)
 また、社会では、6年生の単元「源頼朝と鎌倉幕府」を教える土田圭子先生が、推論を促すポイントについて、こう話す。
 「単元の導入では、復習を兼ね、奈良時代と平安時代の政治や文化、外交、人々の暮らしなどを子どもたちに説明させて板書します。それが『考える種』になるわけです。そこから類推して、鎌倉時代については何を学びたいかを問いかければ、見通しのある答えが返ってきます」
 実際、子どもたちからは「武士が政権を握るのは初めてだけど、どんな政治をしたのだろう」「平安時代には苦しかった人々の暮らしが、どう変わったかを知りたい」などといった答えが返ってきた。
 「さらに、奈良時代であれば『人々は災害に苦しめられたので、天皇は仏教の力で国を救おうとした』など、同じ時代のなかでも政治や宗教、文化などが密接に関連していることを意識させて、単元内でも推論する力を育てていきます」(中島校長)
 理科では、例えば、メダカを孵化させる単元では、既習のインゲンマメの発芽から、インゲンマメの子葉と同じように、子メダカの腹の膨らみのなかにも成長に必要な養分が準備されていることを類推させる。
 「どの教科でも、推論させるためには、必ず、その根拠となる知識や体験を用意します。根拠がなければ、それは単なる予想で、筋道を立てて考えたことにはなりません。「推論」を研究の中心に据えてからわずか1年ですが、自ら進んで考える姿勢は、授業中はもちろん、日常生活のなかでも見られるようになりました」(中島校長)
 「推論」の力の育成を重視する桃山東小学校の校内研究に対して、きちんと知識が身につくのかと不安感を抱く保護者もいないわけではない。そこで桃山東小学校では、保護者や地域住民を招いて年に1回実施する日曜参観のあと、中島校長が、現在の子どもが抱える問題や取り組みの内容を仔細に説明することで理解を求めている。
 「現在の取り組みは、継続によって効果が発揮できる内容です。子どもたちが社会に出たときに、“思考力”を武器にして未来を切り開き、この国を正しく導いていけるように、将来を見据えた研究を続けていきたいと考えています」(中島校長)


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