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国立教育政策研究所 教育課程研究センター総括研究官
工藤文三
くどうぶんぞう●1950年生まれ。
公立高等学校の社会科教員、国立教育研究所(当時)教科教育研究部公民教育研究室長、教科教育研究部教科教育開発研究室長を経て現職。 |
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「学力育成を考えるフォーラム2004」より
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評価の機能を生かした指導改善 |
信頼性の高い評価を行う4つのポイント |
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基礎・基本がどの程度身についているのかを把握するのは、評価活動をおいて他にはありません。基礎・基本の定着は、適切な評価活動とその結果を踏まえた不断の指導改善によって実現されるのです。目標に準拠した評価の趣旨を踏まえて、各単元ごとに信頼性の高い評価を行うためには、ポイントが4つあります。第1は学習内容・学習活動に即した適切な評価規準を設けることです。評価規準の設定で工夫すべきなのは、学習内容・学習活動に即して「観察可能な児童・生徒の状況」を具体的に示しておくことです。第2は評価規準に対応した評価方法の選択と活用です。評価規準ができたとしても、それに対応した評価方法でないと信頼性の高い評価はできません。例えば、「授業の忘れ物」を教科学習の「関心・意欲・態度」の評価対象にするケースがありますが、忘れ物は学習内容の評価とは別なので、適切ではないでしょう。第3はあらかじめ「概ね満足できる」「十分満足できる」の状況を想定しておくことです。例えば、ペーパーテストであれば、どの問題が正答できれば「概ね満足できる」状況といえるのか、あるいは、全体の中で何割が正答できればそういえるのかといったことを事前に想定しておくことです。テストが終了した後に、児童・生徒の出来ばえをみて評価の判断を行うのは妥当ではありません。第4に評価資料の解釈を一人ひとりの児童・生徒に即して綿密に行うことです。児童・生徒ごとに評価資料について吟味・検討し、どの部分の実現状況が十分でどの部分が不十分かを解釈する作業を行います。このことによって、はじめて一人ひとりの学習課題が明らかになるのです。 |
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評価結果の分析を踏まえた学習指導の改善 |
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基礎・基本の確実な定着を図る上で大切なことは、個々の評価結果の解釈に基づいて、ケースごとに応じた指導の見直しと改善を進めることです。 例えば、学習状況が「概ね満足できる」に達した児童・生徒の数が予想よりも少なかったケースでは、学習指導全体として問題があったということであり、内容の捉え方、教材や方法、授業展開等について吟味し直す必要があります。また、一部の児童・生徒の学習状況が十分でないケースでは、どの部分に課題があるのかを検討し、教科の特性を生かしながら補充的な学習や個別指導を行うなどの対応が必要です。
また、「努力を要する」状況となりがちな学習内容を事前に把握しておくことは、事後の指導を行う上でも、指導計画の中での重点項目を決める上でも必要です。このことが明確になっていると、個に応じた指導の進め方も明確になるのではないでしょうか。 |
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