ベネッセ教育総研では、「教師の指導力」、「家庭の教育力」、「学校の経営力」が子どもの学力向上にどのように影響するのかを探るために、全国の小4、小6、中3生計約8900名とその保護者、教師・校長を対象に調査を実施した(「学力向上のための基本調査2004」(注1))。
(注1)学力向上のための基本調査2004
ベネッセ教育総研は、大阪教育大・田中博之助教授、大阪市立大大学院・木原俊行助教授、大阪教育大講師・大野裕己先生の監修のもとに、[A]児童生徒向けの総合学力調査、[B]校長、教師向けの学力向上取り組み状況調査、[C]保護者向け教育意識調査の3つを実施した。児童生徒の「総合学力」を育成する上で有効となる学校や家庭の教育活動のあり方や相互の連携について考察することを目的とした調査である。
[A]対象:全国の小4・小6・中3生計約8,900名(小学校36校、中学校29校)/時期:2004年5月中旬~6月初旬/方法:学校通しによる学力調査+自記式アンケート
[B]対象:校長、教務主任、教諭 計約1,700名/時期:2004年5月中旬~6月初旬/方法:学校通しによる自記式アンケート
[C]対象:児童の保護者 計約6,400名/時期:2004年5月中旬~6月初旬/方法:学校通しによる自記式アンケート
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今回の調査結果から、学校・家庭のどちらか一方ではなく、双方の連携がなされているほど、子どもたちの「学びの基礎力」や「教科学力」、「生きる力」が高くなっていることが検証できた。さらに、校長先生のリーダーシップや地域との連携など、学校の組織としての経営力が高まることによって、先生方の指導力や、家庭の教育力も向上することが確認できた。
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I 「教師の指導力」と子どもの学力との関係 |
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教師の指導スタイルや方法を3つの大きな領域で分類した。(図1-(1))
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1つめは「授業の土台作り(Foundation)」で、子どもの基礎体験を充実させたり、学び合う集団形成作りなどである。
2つめは「学習指導の方法(Approach)」で、学習指導の方法やスタイルなどである。
3つめは「学習の方向づけ(Navigation)」で、子どもへの学習ガイダンス(学び方の指導)や指導と評価の一体化などである。
アンケート項目をこれら3つに分類し、それぞれの質問に対する教師の回答と子どもの教科の総合スコアの偏差値との関係を見たところ、正の相関が見られた。たとえば、2つめの「学習指導の方法(Approach)」に関する項目の中で、「教科指導の中にプロジェクト学習の要素を導入して、課題探求型の授業実践に取り組んでいる」という問いに「とてもあてはまる」と答えた教師と「まったくあてはまらない」と答えた教師の担当する子どもの偏差値には、有意な差が出ている。(図1-(2))
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