ベネッセ教育総合研究所
Case Study 学力調査を生かした実践事例
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「基本的生活習慣」に課題
 学校が漠然と感じていたこれらの問題意識を客観的に把握するため、平野小学校では「教科学力」だけでなく、学習意識や生活の実態を総合的に捉えることのできる「学力調査」(注1)を2003年1月に実施した。

(注1)ベネッセの「総合学力調査」。教科学力に加え、「学びの基礎力」「生きる力」を加えたトータルな学力を捉える調査

 学校側の予測は、的中していた。
 調査の結果、教科学力では全国平均のスコアを大きく上回る結果が出たものの、基本的生活習慣、自己責任などの「学びの基礎力」や、問題解決力、社会的実践力などの「生きる力」で示された社会性や協調性の成長にかかわる項目では、平均を下回る項目も多数出てきたのだ。(図1・2)
図1
■図1 「教科学力」のプロフィール
図2
■図2 「学びの基礎力」のプロフィール
 例えば、「問題解決力」の項目のなかのメディアリテラシー(電子メールを使ったりインターネットに書き込んだりする際は、きまりを守ったり相手のことを考える)、「社会的実践力」のなかの公共性(学校や社会のルールを守り、マナーを大切にしている)や社会参加(自分の住んでいる地域の活動や行事に進んで参加している)、「自己成長力」のなかの自己コントロール力(イライラしているときでも、まわりの人の意見をきくことができる)などの項目で低いスコアがでた。
 調査ではさらに「学びの基礎力」を構成する「基本的生活習慣」のスコアが、学齢が上がるほど低くなるという課題も明らかになった。
 これは、平野小学校の特殊な要素も絡んでいるのではないかと林校長は言う。平野小学校は附属中学への進学希望者のほかに、他校への受験希望者も多くいる。受験を希望する児童の保護者は、受験に必要な学力に敏感になっているケースが多い。
 「ともすると、保護者や児童は、知識中心の狭い学力観、つまり、受験学力重視の学力観にとらわれがちなのではないかと思ったのです」(林校長)
 スコアが低下する背景にはまた、学年が上がるにつれて児童の自己評価が客観的になり、自分自身に課す要求レベルが上がるという要因も考えられる。ただ、「実際に子どもがそう感じているのであれば、その原因や児童の状況をきちんと把握し、打開策を練っていかなければいけません」と林校長は言う。


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