特集 つながる幼小の「学び」 ―幼稚園・保育園から小学校、その接続を考える―
酒井幸子

東京都
文京区立小日向台町幼稚園
園長

酒井 幸子

Sakai Sachiko


塩谷香

東京都
品川区立二葉つぼみ保育園
保育長

塩谷 香

Shioya Kaori

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【幼児教育現場の実態】

文京区立小日向台町(こひなただいまち)幼稚園[東京都]
品川区立二葉つぼみ保育園[東京都]

幼児教育の現場で実践される多様な取り組み

幼稚園や保育園では、小学校につながる学びの基礎を 遊びを通して身につける、さまざまな活動を実践している。 しかしながら、学校教育法に基づく幼稚園と 児童福祉法に基づく保育園では、設立の目的や機能が異なる。 幼児教育現場の実態とねらいを紹介する 。

【幼稚園】

遊びを通して言葉や数に目覚めさせる

 「幼稚園は“教科書のない学校”です。園児は遊びを通して、小学校での学習の基盤となる能力を身につけていきます。一見、自由に遊ばせているように見えるかもしれませんが、“放任”ではありません。実際には、各年齢の発達段階に応じて詳細な計画を立てています」
  東京都文京区立小日向台町幼稚園園長で、全国国公立幼稚園長会の会長を務める酒井幸子先生は、幼稚園での教育についてこう話す。
  2004年度の文部科学省の調べでは、全国の幼稚園数は約1万4千園。そのうちの約4割が国公立、約6割が私立だが、国公立は小規模な園が多く、園児の約8割は私立に通っている。
  国公立の幼稚園は、研修や研究が国の方針に沿って実施されるため、指導内容に大きな差は生じない。一方で、私立は園によって方針が異なり、経営者の考えによって特色が打ち出しやすいという性格を持つ。
  そのような違いはあるが、どの幼稚園の活動にも共通しているのは、冒頭の酒井先生の言葉のように“遊び”の中から学びを引き出す点だ。
  例えば、小日向台町幼稚園では、隣接する小学校の花壇を借りて、サツマイモの栽培を行っている。子どもに植物を育てることの喜びを実感させるのがねらいだが、同時に、観察を通して理科的な興味を芽生えさせ、収穫時にはサツマイモを10個単位の山にして数えさせることで、小学1年生の算数「10の固まり」の学びにもつなげている(写真1)。このように、園児は遊びを通じて言葉や数を覚え、それを生活の中で使いこなす能力を身につけていく。
写真1
写真1 園児たちが収穫したサツマイモ。あらかじめ「5こ」「10こ」と書かれた紙に、その数の通り、サツマイモを置いて数を数えさせる
 「日々の遊びは、文部科学省による幼稚園教育要領をもとに、月案や週案、日案を作成し、カリキュラムに沿って実施しています。しかし、遊びといっても、興味がわかなければ、園児は意欲的に取り組みません。そこで園児の興味や関心を大切にした環境づくりに配慮しています」(酒井先生)
  例えば、2、3学期になると、小学校進学を楽しみにする5歳児が自発的に工作でランドセルや黒板をつくり、“小学校ごっこ”をする姿が見られる。また、地域で夏祭りなどのイベントがあれば、多くの園児がゲームをしたり買い物を経験したりする。その直後に「お店やさんごっこをしよう」という流れに持っていけば、園児は非常に意欲的に取り組む。これらの活動では、遊びに必要な材料や道具の使い方を学ぶ。お店やさんごっこでは、看板を書くために用いる平仮名も必要感から覚えていく。


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