学びが深まるIT活用 IT活用で育つ表現力・集中力

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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明確な目的意識、相手意識が自ら学ぶ意欲を高める

 今回見学した授業は、3年生の「総合的な学習」で「横手のすてきを調べよう」という調べ学習の成果をまとめ、サーバー上で公開するための画面を作成する授業だ(次ページ実録e授業参照)。実際の調べ学習の中で撮影した画像を画面上に取り込み、それに合った文章を入力していく。
  特筆すべきは、子どもたちの集中力だ。作業は基本的に子どもの自由にさせていたが、話をしたり、席を立ったりする子どもはほとんどいない。2時間連続の授業だったが、間の休み時間に休憩する子どもが少なかっただけでなく、作業が完了しなかった子どもは授業終了後も黙々と作業を続けていたのだ。その集中力を支えているのは、子どもたちの強い動機だと、担任の尾形先生は強調する。
  「学習の途中経過を報告する中間発表会で、子どもたちから『もっと多くの人に知ってほしい』という声が上がりました。その声が共同サーバー上でも発表することになったきっかけです。調査先に3回も4回も足を運んで話を聞いた結果、大人も知らないほど地域について詳しくなったという自負が、子どもたちにはあるようです」
  子どもが授業に集中しているのは、パソコンが大好きという要因もあるだろう。しかし、それだけならここまで黙々と作業することはない。「別の小学校の友だちにも見てもらいたい」という明確な目的意識、相手意識を持っているからこそ、集中できるのだ。
  授業では、子どもたちが発言する姿、聞く姿も印象的だった。ある子どもの発言に対して、ほかの子どもたちが「うん」と相槌を打ったり、「なぜ?」と問いかけたりする場面が多いのだ。
  「人と話すときはいつもニコニコ笑顔で話すこと、人が話しているときにはうなずきながら聞くこと、わからないときは質問すること。いろいろな場所に出かけて、さまざまな人にインタビューするわけですから、子どもたちには話し方、聞き方をしっかり指導しました。そうした成果が、学校外だけでなく、授業や友だちに対しても表れているのでしょう」(尾形先生)
  熱心にインタビューする子どもたちを、地域の人たちは温かく迎えてくれ、中には温泉に入れてもらう体験をしたグループもあったという。そんな地域の人たちとの触れ合い抜きには、ITで発信するという意欲は、高まらなかっただろう。横手小学校の研究テーマである「コミュニケーション能力の育成」とIT活用が相乗効果をもたらし、着実に成果を上げつつある。
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交流サイトの自己紹介のページ
愛宕浜小学校との共同Webサーバーには、パスワードを入力すれば両方の小学校からアクセスし、同じ画面を見ることができる。自己紹介のページは掲示板風になっていて、自由に返信を書き込めるようになっている

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