地方分権時代の教育行政 千葉県野田市
千葉県野田市

千葉県北西部に位置する人口約15万人の都市。2003年6月、隣接する関宿町と合併し、新生「野田市」としてスタートを切った。東に利根川、西に江戸川、南に利根運河と三方を河川に囲まれた水と緑の豊かな地域。東部・川間・中央・北部・福田・南部・関宿の7地区からなり、20の公立小学校を擁する。

【野田市教育委員会】

〒278-8550 
千葉県野田市鶴奉7-1 
TEL 04-7125-1111(代)

近田孝夫

▲野田市教育委員会学校教育部長

近田孝夫

Konda Takao

塚本豊

▲野田市教育委員会 学校教育部次長

塚本豊

Tsukamoto Yutaka

※本文中のプロフィールはすべて取材時(06年3月)のものです
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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地方分権時代の教育行政
地方自治体が挑む学校教育への新たな取り組み

千葉県野田市

学校裁量の拡大と地域連携で特色ある学校づくりを促進

地方分権が進む中、自治体は学校教育に関して、独自の取り組みをどのように進め、学校との連携をどのように図っているのだろうか。事例を通して、教育行政の新たな動きに迫る。今号では、「野田市教育環境整備事業」により独自の取り組みを推進する千葉県野田市を紹介する。

特色ある学校づくりに地域の資源を生かす

 野田市が学校教育の環境の見直しに着手したのは、2001年10月のこと。折しも、02年4月から完全学校週5日制、新学習指導要領という二つの教育改革の実施を目前に控え、保護者から「子どもたちの学力は大丈夫か」「土曜日はどのように過ごせばよいか」といった不安の声が上がり始めた時期だった。
  学習内容と時間が大幅に削減される中、私学と比べて、教育機会の平等を保障するために、行政としては何ができるのか。こうした課題を受け、野田市教育委員会(以下、市教委)は「学力向上対策」「土曜日の活用」を中心とした教育環境の見直しに着手。わずか半年後の02年4月に、「野田市教育環境改善事業(05年度より教育環境整備事業)」をスタートさせた(図1)。
図1
  この事業は、少人数授業や市独自の副教本の開発・活用、サタデースクールの設置など、五つの取り組みを柱として、子どもたちの「確かな学力の向上」と「豊かな心の育成」を図ることを目的としている。更に、04年度には二学期制を導入、05年度には学校と地域との連携を強化し、教育課程や学校行事の見直しを促すことで特色ある学校づくりを進めている。
  これらの目標達成のために、野田市はどのように学校を支援しているのだろうか。
  例えば、地域の人材や資源を最大限に生かした教育は同市の特徴の一つだが、人材確保は市教委のバックアップによるところが大きい。05年度に締結した東京理科大とのパートナーシップ協定は、そのよい例だ。市南部にある三つの小学校に同大の学生を派遣し、算数の授業でチームティーチングを行うための指導助手、自然観察会や星座教室などの講師として、教師をサポートしている。
  「地域ぐるみで子どもを育てていくことを通して、地域の一体感を生み出すことも、本事業のねらいの一つです。そのためには、学校は単に地域の協力を仰ぐだけでなく、学校としてどう地域に貢献していくかも重要だと考えています」と野田市教委学校教育部次長の塚本豊氏は強調する。
  実際、南部のある小学校では、05年の夏休みに体験学習として、親子で参加できるコンピュータ教室や料理教室を開催した。学校の持っている設備やノウハウを地域に還元してこそ、地域と学校の一体感が形づくられていくというのが、野田市の基本姿勢だ。
  なお、同市が地域との連携を深める背景には「教育による町づくり」を推進したいという思いもある。地域の一体感が増すことで、犯罪抑止にもつながる。それが、地域の活性化をもたらすというわけだ。

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