地方分権時代の教育行政 愛知県東海市
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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目に見えにくい成果にも数値目標を導入

 そうした姿勢の市教委が05年度に始めたのが「輝く学校づくり事業」だ。鈴木淳雄市長と各校の校長とが懇談した席で、「子どもたちが誇りを持てるような学校づくりをしたい」と校長側が思いを伝えたのがきっかけだった。
  初年度の05年度には市内の小・中学校18校分として1800万円の予算を計上。各学校が自由に予算を使い、創意工夫を重ねて特色ある教育活動を進めていくのが狙いだ。
  だが、「予算の配分は全校一律ではない」と、三浦好美学校教育課長は説明する。
  「市教委からのトップダウン方式ではなく、予算の使い道も学校に任せたいと考えました。ただし、内容によってお金がかかるものとかからないものがあります。一律に100万円支給するのではなく、各校から上がってきた計画を査定して配分しました。ですから、50万円の学校も150万円の学校もあります」
  事業期間は05~08年度の4年間。各校には「事業評価表」を作成し、数値による成果指標を盛り込むことを求めた。
  「今は『教育の成果は目に見えにくい』ということを言い訳にはできない時代だと思います。教育施策についても、数値的な評価ができるシステムをつくっていきたいと考えました」(鈴村俊二学校教育課指導主事)
  「数値目標を掲げれば、評価の際に、学校は取り組みの成果や反省点を明確に把握できます。また、これまでは市当局に対して、漠然と『成果が上がっています』と報告するだけでしたが、数値で成果を示すことができるようになれば、予算の獲得に向けて説得力のある説明ができるようになります。本市が導入している『めざそう値』という政策評価システムの一環でもあります」(近藤哲夫次長)
  資格取得率や体力測定値、図書貸出率など、成果を数値で測りやすい取り組みがある一方で、伝統芸能やビオトープなど、中には数値化が困難なテーマを掲げた学校もある。それでも、学校側と市教委が議論を重ね、子どもたちの意識調査や保護者アンケートなどを用いることで数値目標を設定した。その過程では、市教委は学校側の考えを尊重しつつも、計画内容が不十分な場合、学校側に差し戻したケースもあったという。最終的には、08年度に各校の4年間の成果を一般に公表する予定だ。
  「授業改革は教師の問題ですが、『輝く学校づくり』が成功するかどうかは、地域や保護者をどれだけ巻き込めるかにかかっていると思います」(深谷教育長)
  学校現場は、地域とどのように協力し、数値目標をどう実現しようとしているのか。そして市教委の考えをどう受け止めているのか。「輝く学校づくり」に奮闘する東海市立名和小学校の事例を見てみよう。

図 東海市教育委員会の主な事業
 子どもたちが自分の学校に愛着と誇りを持てるよう、各校による創意工夫を生かした教育活動を支援。
 小学校における国際理解教育の一環として、外国人の外国語指導助手(ALT)を全小学校に配置。更に、小学校を基点として中学校にも派遣し、小中一貫した英語活動を展開。
 市内全小・中学校が中学校区ごとに研究テーマを設定し、小中連携による実践的な研究を通じて指導力の向上を図る。
 06年度に「東海市立教員研修センター」を開設。魅力ある授業の研究、教材の開発、教育についての情報収集・調査などを実施し、教職員の資質向上を図る。
 不登校傾向の生徒や精神的に不安定な生徒に対して、個別の学習支援や放課後のふれあい活動などでサポートする指導員を各校1人ずつ配置。

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