そうした姿勢の市教委が05年度に始めたのが「輝く学校づくり事業」だ。鈴木淳雄市長と各校の校長とが懇談した席で、「子どもたちが誇りを持てるような学校づくりをしたい」と校長側が思いを伝えたのがきっかけだった。
初年度の05年度には市内の小・中学校18校分として1800万円の予算を計上。各学校が自由に予算を使い、創意工夫を重ねて特色ある教育活動を進めていくのが狙いだ。
だが、「予算の配分は全校一律ではない」と、三浦好美学校教育課長は説明する。
「市教委からのトップダウン方式ではなく、予算の使い道も学校に任せたいと考えました。ただし、内容によってお金がかかるものとかからないものがあります。一律に100万円支給するのではなく、各校から上がってきた計画を査定して配分しました。ですから、50万円の学校も150万円の学校もあります」
事業期間は05~08年度の4年間。各校には「事業評価表」を作成し、数値による成果指標を盛り込むことを求めた。
「今は『教育の成果は目に見えにくい』ということを言い訳にはできない時代だと思います。教育施策についても、数値的な評価ができるシステムをつくっていきたいと考えました」(鈴村俊二学校教育課指導主事)
「数値目標を掲げれば、評価の際に、学校は取り組みの成果や反省点を明確に把握できます。また、これまでは市当局に対して、漠然と『成果が上がっています』と報告するだけでしたが、数値で成果を示すことができるようになれば、予算の獲得に向けて説得力のある説明ができるようになります。本市が導入している『めざそう値』という政策評価システムの一環でもあります」(近藤哲夫次長)
資格取得率や体力測定値、図書貸出率など、成果を数値で測りやすい取り組みがある一方で、伝統芸能やビオトープなど、中には数値化が困難なテーマを掲げた学校もある。それでも、学校側と市教委が議論を重ね、子どもたちの意識調査や保護者アンケートなどを用いることで数値目標を設定した。その過程では、市教委は学校側の考えを尊重しつつも、計画内容が不十分な場合、学校側に差し戻したケースもあったという。最終的には、08年度に各校の4年間の成果を一般に公表する予定だ。
「授業改革は教師の問題ですが、『輝く学校づくり』が成功するかどうかは、地域や保護者をどれだけ巻き込めるかにかかっていると思います」(深谷教育長)
学校現場は、地域とどのように協力し、数値目標をどう実現しようとしているのか。そして市教委の考えをどう受け止めているのか。「輝く学校づくり」に奮闘する東海市立名和小学校の事例を見てみよう。 |