第2部 学力調査を活用した実践事例 [事例1]石川県小松市立今江小学校
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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算数の学力が向上し06年度は国語の研究に着手

 2年間に渡る授業研究の成果は、さまざまな形で表れた。「算数の授業はよくわかりますか」というアンケートに対し、「よくわかる」「わかる」の合計は全校の89%に達し、大半の児童が授業をわかりやすいと感じていることがわかった。
  5年生を対象に06年1月に実施した学力調査では、算数の多くの領域で学力の向上が見られたことも見逃せない。
  「調査結果により、取り組みの方向性が間違っていないことが確認されました。算数については一応の成果が得られたため、今年度以降は、同じく学力調査で課題が指摘されている国語力の強化を目指す考えです」(高島校長)
  分析の結果、国語では、話し方や論理的に話す力、文章表現など、特に表現力全般が不足していた。更に算数でも、計算問題を解く力はあるものの、問題文を読み取れずに不正解に至るケースが目立ったという。
  そこで、今江小学校が06年度から力を入れていることの一つが、言語環境の整備だ。
  「教室に『〈話す・聞く〉のルール』という張り紙をしたり、教室や廊下の掲示物を充実させたり、教師も言葉遣いを見直すことで校内の言語環境を整え、コミュニケーション能力を基本から身に付けさせるのが狙いです。『国語科』だけではなく、全教科の土台となる『国語力』の育成を目指します」(高島校長)
  教師の言語意識を高める取り組みの一つに、教師による自己評価がある。今江小学校では、「学習態度」「話す・聞く」「書く」「学習道具」の実態について、担任の教師の指導が行き届いているかを自己評価している(図4)。その際、評価の高いクラスの担任から具体的な指導法や工夫を集め、それを文書化して共有できるようにしているのだ。
  このように、今江小学校では、さまざまな取り組みを教師間で共有するための手法として、徹底した「文書化」が行われている。毎時の授業のめあてや年間カリキュラム、単元の系統性など、あらゆる指導のノウハウを文書化して共有することで、新任の教師でも高水準の指導を確保できる。
  今後の課題は、教師の基礎的な研修の強化と、学力調査の更なる活用だ。特に、学力調査の活用は途上の段階であり、今後も積極的に指導に生かしていきたいと、高島校長は意欲的に語る。
  「指導の道筋が見えていないと、児童を正しい方向に導くことはできません。教科学力の数値だけをクローズアップせずに、『人間力』や『生きる力』を含めた総合的な評価を指導に活用したいと思います」
▼図4 「基本的な学習体制」の評価表(4年生担任)
図4
学力の支えとなる日々の学習体制について、担任が自分のクラスを4段階で評価。各クラスの結果を集計すると共に、それぞれが対策を持ち寄り、クラスごとに今後の具体的な取り組みを定めている

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