プランの中に位置づけられている「確かな学力の向上」の一環として始められたのが、「小さな国際人」育成事業だ。これは、小学3~6年生を対象に、2週間に1時間、外国語指導助手(ALT)とクラス担任のチーム・ティーチングによる「英会話体験学習」を行うもの。00年度に四つの小学校でモデル事業としてスタートし、03年度からは市内の小学校133校すべてに拡大した。全校にALTを配置し、「総合的な学習の時間」(以下、「総合学習」)のうち、年間20時間程度を充てることが義務付けられた。
「古くから貿易港として栄えてきた門司港のある本市には、大学や企業が多く、帰国生や外国人の子どもたちが増えています。国際化が進む中、国際理解教育の一環として、英語に親しみ、文化の異なる人たちと共に生きていく姿勢を養うのが目的です。英語の『技能』ではなく、英語を使って積極的にコミュニケーションを図る『態度』を養おうというものです」(上山敬義指導部主幹)
小学校教師の多くは英語教育に不慣れだ。教師や学校間で、授業内容にバラツキが生まれるおそれもある。そこで、市教委は「小・中連携 英語教育プログラム」(図2)を作成した。A4判、238ページに渡る指導案で、小学3~6年生の1時間ごとの授業展開にまで踏み込んだ詳細な内容となっている。更に、中学1年生の1学期の英語の指導内容にまで言及しており、小・中学校のスムーズな接続も図っている。
ただし、詳細なプログラムを作成したといっても、それぞれの教師が創意工夫を加えてアレンジすることは自由だ。例えば、二つあるゲームのうち、子どもたちの関心に合わせて一つを省略したり、ルールをシンプルなものに変えたりといった具合だ。
更に、教師のスキルを高めるための研修にも力を注いでいる。毎年夏休みには3日間の研修会を開催。各校の優れた取り組みを紹介したり、教師が児童役になってALTによる授業を受けたりしている。昨年度から各校1人以上が参加することになっており(それまでは希望者)、06年度までに市内の全小学校教師約5千人のうち延べ688人が受講した。
今後の課題は、英会話体験学習の成果を検証する方法を開発すること。コミュニケーション力や意欲を数値で測る難しさがあるからだ。
「児童や保護者、ALTからアンケートを取って、事業に対する満足度は把握していますが、それだけでは英語を使ってのコミュニケーション能力がついたかどうかが客観的にはわかりません。06年度から大学教授や教師らによる研究協議会を立ち上げ、具体的にどんな力が育っているのかを検証する方法を研究しているところです」(上山敬義指導部主幹)
それでは、小学校現場ではどのような英会話体験学習を展開しているのだろうか。北九州市立小倉中央小学校の事例を見てみよう。 |