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5つの資質・能力の指標を研究授業で深める |
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こうした教育活動の裏には、学力観、そして子ども観を、教師間で徹底して共有しようとする努力がある。
「経験などによって教師の指導力に差があるのは、否めません。だからこそ重要なのが、『こんな学力をつけよう』『こんな子どもを育てよう』といった学力観や子ども観を共有することです。それによって教師が同じ方向へと成長できるのです」(中嶋校長)
このため、研究授業を年15回程行い、教師同士で話し合う場を設けている。また、研究授業のうち約半分は一般にも公開し、教師全員が年1、2回、公開授業を行う。授業前には指導案を検討し、授業後には意見を述べ合う協議会や、フリートーク形式のワークショップを開催。その話し合いを基に、教師の約半数が属する研究推進委員会で授業の成果や課題をまとめて授業者や参観者にフィードバックする。分析・検討をいくえにもめぐらせることで、研究授業の効果を最大限に引き出しているのである。研究主任の猪田(いのだ)謙先生は、こう説明する。
「板書や発問などの技術面はあまり話題に上りません。5つの資質・能力の、どれが、どのように発揮されていたかを子どもの様子から観察し、学習の定着とのかかわりを分析します。ですから、授業中は教師の動きではなく、ほとんど子どもの動きや表情を見ています」
研究授業を通して「このような支援をすれば、こんな資質が伸びる」といった事例が蓄積され、5つの資質・能力の見方にも奥行きが感じられるようになった。現在は、それを基にそれぞれの資質・能力において、「具体的に何ができる状態を目標とするか」をまとめた指標の作成に取り組んでいる。その際に特に気をつけているのが、子どもの多様性を見逃さないことだ。猪田先生は、こんなエピソードを例に挙げる。
「以前、川の観察をしたとき、一か所をぼんやりと眺めていて、何も記録しない子どもがいました。次の時間にも、やはり同じ場所を眺めている。注意しようと思ったら、その子は前の時間との天気や風向きの違いに着目した記録を一気に書き始めたのです。そのときに、子どもによって能力の発揮の仕方はさまざまなのだと、目を見開かされる思いがしました」
総合学習を中心に、子どものありのままの姿を見つめる努力をしてきた大手町小学校。今も、時代の変化に対応しながら、常に進化し続けている。 |
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