宮崎県日南市は、2005年度から文部科学省の学力向上拠点形成事業の指定を受け、「振徳プラン」(注1)を策定し、学力向上と読書活動を推進してきた。このうち、読書活動については大きな成果があり、子どもの読書習慣が定着してきた。
課題となったのは、学力の向上だ。県で実施する「総合学力調査」の結果を見ると、日南市の平均点が県全体の平均点を下回る項目が少なくなかったのだ。
子どもの学力を伸ばすためにはどうすればよいか。日南市はまず教師の意識調査を行った。日南市教育委員会学校教育課の東宏太朗指導主事は、教師の声を次のように集約する。
「『学力向上のためには授業が大切』という声が多く挙がりました。もう1つ多かったのは、家庭学習習慣と基本的な生活習慣を定着させることの重要性を指摘する声でした」
「子どもの学力を伸ばすには、生活習慣の確立が大事」という意見は、教師の経験に基づいたものだ。これは単なる実感にとどまらず、ベネッセコーポレーションの各種調査でも「教科学力」「学びの基礎力」や「生きる力」との間には相関関係があることが裏づけられている。そこに注目した日南市は、学習意識調査を含む「総合学力調査」を導入した。
日南市は、この調査の分析結果を生かし、授業の改善によって教科学力を高め、「学びの基礎力」や「生きる力」をバランスよく向上させる取り組みを実施することにした。
ところが、これらの取り組みには壁があった。
「多くの学校から『総合学力調査』の分析結果を、学習指導にどう生かせばよいかわからないという声が上がりました。そこで、教育委員会の研究機関である教育研究所が学力調査の結果を学習指導に生かす方法を研究し、日南市の全小・中学校に広めていくという方法を取ることにしました」(東指導主事) |