地方分権時代の教育行政 宮崎県日南市
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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継続的な学力向上を目指しPDCAサイクルを導入

 教育研究所は、日南市内の小・中学校の教師十数名の研究員で構成され、学校ではすぐに対応しにくいテーマを研究し、結果を学校にフィードバックする。
  研究員は06年度の「総合学力調査」の結果を分析し、2つの点に着目した。1つは算数・数学でA層(成績上位層)とC層(下位層)との差が大きく、またC層の中では到達度のバラツキが大きいこと。もう1つは、「自ら学ぶ力」が弱く、学習計画力や学習方法、家庭学習習慣を身につけるための支援が必要なことだ。
  この2つを解決する指導法を示すために、教育研究所は市の教師を対象に、小6の算数と中1の数学、小4の学級活動で提案授業を行った。
  小6の算数では、到達度のバラツキが大きいC層の児童への対応を最重点とし、チームティーチングやプリントを活用した授業を提案した(P.5コラム参照)。また、中1の数学では、紙を折って切るという身近な活動によって、数学的な見方や考え方を深める授業を提案した。
  小4の学級活動では、子どもの「自ら学ぶ力」を高めることを目的とした提案授業が行われた。『13歳のハローワーク』(村上龍著/幻冬舎刊)などを教材として用い、「夢を実現するためには、今、すべきことをしっかり行うことが大事であること」を確認し、保護者と児童が一緒になって、家庭学習計画を立てるという内容だ。
  授業改善を各校に浸透させるには、(1)「総合学力調査」の分析、(2)学習指導方法の研究開発、(3)研究発表会での学習指導法の提案、という流れを計画的、継続的に行うことが必要だ。そこで、日南市は07年度から図1のようなPDCAサイクルで、学力向上の取り組みを展開している。学校教育課の外村正人参事はその概要をこう説明する。
  「1学期の初めに『総合学力調査』などを行い、その結果を基に教育研究所と学校とが協力して改善策を考えます。結果と分析の資料は調査の委託先から詳細なレポートが出ますから、私たちは改善策の検討に専念できます。そして、各校が改善策に取り組み、聞き取り調査などをして計画を見直しながら、12月に2回目の『総合学力調査』を行い、狙い通りに子どもの学力が伸びたかどうかを測ります。その結果を検証し、次年度の改善計画へと結びつけていくわけです。情報を小・中間で共有することでカリキュラム面や学習指導面での小中連携にも役立ちますし、重要な引き継ぎ資料にもなります」
  市を挙げての学力向上の取り組みが今後どのような成果をもたらすか、日南市の試みに注目したい。

図1

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