教師がつながる「授業研究」

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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世代間ギャップが授業研究の活性化を阻害

 一方、教師集団の世代間ギャップも、授業研究が形骸化する要因の一つです。
 現在、学校現場では教師の新卒採用が増え始めていますが、その上の世代は50歳以上が多く、20代後半から40代が少ないというアンバランスな年齢構成になっています。上と下をつなぐ世代が抜けているため、ベテランの指導技術が若手へとスムーズに伝わりません。
  授業研究では若手が授業者に指名されるケースが多いのですが、参観する年配教師は若手から学ぶという意識は持ちにくいものです。逆に、ベテラン教師が授業をしたとしても、若手は「あの先生と自分は違う」と距離を置いてしまいがちです。
  こうした世代の差は、考え方にも表れています。教師の世界に限ったことではありませんが、若い教師は失敗を恐れて「そつなくこなそう」と、いわば減点方式の発想を持つ傾向にあります。一方、ベテラン教師は「人よりも抜きん出よう」という加点方式で臨み、自分なりの工夫をアピールしようとします。そこには、昔は失敗に対して寛容な社会だったという事情もあるのでしょう。また、若い教師は個人主義でマニュアルに慣れていますが、年配教師は集団主義で議論を重んじるという違いもあります。こうした世代間のギャップは、集団の結び付きを弱める方向に働いているのです。
  その状況は、元来、教師集団が抱えている「全員で目標を共有しにくい」というマイナスの側面を強めていると感じます。
  元々、教師集団は学校の「荒れ」などの大きな問題があると結束力が強まりますが、そうでない場合は学年や教科に分かれてしまい、全体で一つの課題を共有しにくい体質を持っています。しかも小学校は学級担任制のため、学級の壁を取り払い、意見を述べ合うのが難しい。教師がそれぞれ「自分の学級を育てたい」という強い意欲を持つ一方で、ほかの教師には口を出されたくないという意識が芽生えるのでしょう。
  本来、学力の二極化や学びに向かう意欲の減退など、共有すべき課題はいろいろとありますが、課題をオープンに話し合う雰囲気は生まれにくいのが現実です。研修の際に活発な意見が交わされにくいのも、「自分のクラスではないから」という遠慮が働いていることは無視できません。
  更に、近年は、教員評価の導入によって、だれかに悩みを漏らせば、指導力のない教師と判断されかねない状況です。そうした事情も、教師が1人で課題を背負ってしまう一因となっているのではないでしょうか。
  また、人前で批判されることを嫌うという文化の弊害もあります。互いが切磋琢磨するような集団文化の中では、批判も「次のステップのための評価」と、前向きに捉えられるのですが、そうした集団文化が希薄なところでは、良かれと思って率直な意見をぶつけても、本人は「恥をかかされた」と強く不満を持ってしまうこともあります。


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