教育現場の挑戦 「読解」の授業で育む、自分の考えを表現できる子

京都府京都市立御所南小学校

▲京都府京都市立御所南小学校

【School Data】
1995年4月に5つの小学校が統合して開校。97年度から3年間、文部省(当時)の指定を受け「総合的な学習の時間」を柱とした教育課程を研究し、02年度からは「新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究」の指定を受け、コミュニティ・スクールの在り方を研究。06年度から小中一貫教育を始めた。

校長●村上美智子先生

児童数●910名

学級数●29学級(うち育成学級3学級)

所在地●〒604-0973 京都市中京区柳馬場通夷川上る五丁目242

TEL●075-223-1-0148

TEL●075-223-1-0149

URL●http://www.edu.city.
kyoto.jp/hp/goshominami-s/


村上美智子

▲京都市立御所南小学校校長

村上美智子
Murakami Michiko

藤本鈴香

▲京都市立御所南小学校

藤本鈴香
Fujimoto Suzuka
読解科主任。6年生担任。
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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教育現場の挑戦

そのとき、子どもは、教師はどう変わったか

京都府京都市立 御所南(ごしょみなみ)小学校

「読解」の授業で育(はぐく)む
自分の考えを表現できる子

実践のポイント
Point1 個の学びとグループ学習で考える力を深める
Point2 「読解メソッド」で学んだことを各教科で実践する授業を展開
Point3 表現の型の習得を通じてすべての子が「できた!」を体験

新教科「読解科」を立ち上げPISA型の読解力を育成

 京都市の中心部に位置する京都市立御所南小学校は、児童数の減少に伴い、5つの小学校が統合してできた開校13年目の学校だ。2002年度からは、文部科学省「新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究」の指定を受け、コミュニティ・スクールとして学校運営改革を進めている。
  06年度には、京都市立高倉小学校と京都市立御池(おいけ)中学校と共に小中一貫教育プロジェクトをスタート。小学1、2年を「基礎・基本の獲得期」、小学3~5年を「基礎・基本の習得と活用期」、小学6年と中学1年を「学びの充実期」、中学2、3年を「学びの発展期」とし、9年間の一貫教育を通じて、「自ら学び、自ら考え、学んだことを社会や生活に生かす力をつける」ことを目指している。
  特に、「総合的な学習の時間」における問題発見と解決的な学習には力を注いだ。地域の専門家から伝統工芸や伝統文化などを教わるという、コミュニティ・スクールならではの取り組みとの相乗効果もあり、子どもたちはさまざまな分野に興味・関心を持つようになっていた。
  一方、学習が進むにつれ、課題も見えてきた。
  「子どもたちは、課題を前向きに解決しようとする力や学習意欲は高いのですが、記述力や表現力には課題が見られました。思いや考えを持っているのに、人にわかってもらえるように表現することが苦手な子が少なくなかったのです」と、藤本鈴香先生は話す。
  そこで07年4月から、国語とは別に、全教科の基盤となる力を育成する「読解科」を設けた。年35時間(1年生は34時間)の「読解メソッド」、年10時間の「読書くらぶ」の時間を中心に、他教科と連携を図りながら学校の全体でPISA型の読解力を育成していく(図1)。
  読解科立ち上げのきっかけは、国際的な学力調査でトップを誇るフィンランドへの視察だった。村上美智子校長は、御所南小学校の教師や他校の校長ら10人と、学力の高さの理由を探るためにフィンランドを訪問している。日本教育大学院大の北川達夫客員教授にアドバイスを受けて、日本との国語教育の違いに目的を絞って視察。フィンランドの国語教科書の著者に話を聞き、研修も受けた。
  「フィンランドの国語教育では、自分の考えを持つことに最も重点を置いていました。日本の国語教育では、文章の内容の読み取りや要約などに重点が置かれています。重点の置き方が違ったのです」と村上校長は話す。フィンランドで学んだことを基に、北川客員教授や文部科学省初等中等教育局の井上一郎教科調査官の指導を仰ぎながら、日本の子どもに適した国語教育の方法を研究した結果、「読解科」の創設にたどり着いたのだ。

図1

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