教育現場の挑戦 「読解」の授業で育む、自分の考えを表現できる子
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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「考える力」と「表現する力」の二本柱をグループ学習で高める

 読解メソッドの授業では、従来の国語ではカバーしきれなかった「自分で考えて、表現する力」を中心に学習を進める。読解力を「論理的に思考し、自分の考えを表現するための方法を身につけ、実社会・実生活の中に生かすことができる力」と定義。「論理的思考力(考える力)」を核として、「課題設定力」「情報活用力」「コミュニケーション力」「記述力」を身につける授業を展開する。
  授業はフィンランドの国語教科書のほか、補助教材を使って進める。新聞、絵、音楽、写真など表現にかかわるものすべてが教材だ。
  例えば、2年生の授業では、生活科の「たんけん! はっけん! ごしょみなみのまち」の活動でお世話になった店の宣伝ポスターを作った。最初に「どのようなポスターにしたら、お店の良さが伝わるだろう」という疑問が子どもたちの間から出てきた。そこで、教師は2種類のポスターを紹介。グループでどのような内容が書かれているか、どんな表現の工夫がされているかなどの意見交換をして、気づいたことを「わくわくアイデアカード」にまとめた。最終的には、一人ひとりがポスターを制作した。
  6年生では、新聞に投書することを目標とした授業を展開する。まずは「新聞を使って、どんなことが学べると思う?」と問いかける。「株のページもある」「読み比べてみると、新聞によって内容が違う」と子どもから気づいたことを引き出し、新聞を知ることから始める。次に社説を読み、「事実は文末が『だ』、『のだ』、『である』になっているね」と、新聞で使われている表現方法や論の流れに着目させる。そして、掲載されている投書の中から各自1つを選び、「その考えに賛成か反対か」と自分の意見を考えさせた。その後、4人のグループで意見交換をし、グループごとに発表。最後に、一人ひとりが投書を書いた。
  1つのテーマに充てる時間は3、4時間だ。テーマによって課題や内容は異なるが、進め方はほぼ同じ。まずは自分で考えさせる。次に、自分の考えをグループで発表し、意見交換する。そして、交流によって深まった考えを自分でまとめる。「個の学び→グループ学習→個の学び」というプロセスで学習を進めることにより、自分の考えをしっかり持ち、表現することができるようになっていく。
  「読解のプロセスは、学びのプロセスと同じです。まずは1人で教材を読み、自分の体験や知識と比べたり関係付けたりしながら自分の考えをつくる。その上で、グループ学習でほかの人の意見を聞き、自分の意見と比べながら考えを深めていく。読解力を養うにはグループ学習が大切ですが、人の意見をきちんと聞くことができる関係がクラス内にできていることが前提となります(写真1)」(村上校長)
  例えば、前述の6年生の授業で使用した投書の中に「子どもにとって最高のご褒美は褒められること」という趣旨のものがあった。グループ学習では、「褒められるとやっぱり嬉しいよね」とうなずき合う中で、「『成績が上がって褒められると、また次も褒めてもらいたいと思う』というところには反対」との意見が出た。「だって、勉強は褒めてもらうためじゃなくて、自分のためにするものだから」という考えにほかの子どもたちも納得。グループごとの発表では、「賛成」だが部分的に「反対」ということを理由をつけて説明した。

写真1
写真1 「聞き方のポイント」「話し方のポイント」「対話する力を身につけよう」といった読解力向上のための心得が、教室のあちこちに貼られている

  授業では子どもが主役だ。任せられる部分は子どもに任せ、自ら学びを切り開いていけるようにする。例えば、グループ活動や発表での司会は子どもが行う(写真2)。教師は助言をしたり、短く感想を述べたりするだけだ。
  また、「自分の考えを持つ」学習を進めながら、同時に「自分の考えを表現する」ための「表現の型」の学習も行う。感想文、観察文、考察文、意見文の書き方や、話し方や対話、司会の方法などだ。学んだことが他教科で活用できるように各教科に必要な読解力を分析し、理科の観察文、音楽の感想文を書くための学習など、相互に関連付けたカリキュラムにしている。

写真2
写真2 意見交換のためのグループ学習は、1、2年生では2人で行い、人の話を聞く姿勢が身についた3年生以降は4人のグループで司会を立てて進めていく

  読書指導では、本を読む観点を示した「読書カード」を学習レベルに応じて用意し、その観点を意識しながら読むように指導している(図2)。そして、「読書くらぶ」の時間に、「登場人物の中で一番共感できた人物はだれ?」「この本と出会って、自分の生き方にいかしたいことを1つだけあげてみよう」など読書カードの観点を基に、自分がなぜそう考えたかの理由や根拠を示しながら交流し合う。また、学年ごとに「御所南選定図書30選」として発達段階に合った30冊を選び、うち5冊を「読書くらぶ」の時間の課題図書としている。読書後に意見交換の時間があることで、子どもは楽しみながら読書に取り組んでいるという。

図2

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