私は教科書やメソッド・ガイドの執筆を長年続けてきましたが、その間に考えていたのは「1980年代までのフィンランドの教育をなんとか変えたい」ということです。かつてのフィンランドの教育は、今考えると恥ずかしいくらい画一的な方法で行われていました。私自身「みんなで教科書をきちんと持ちましょう」、「先生が示したところを順番に読みましょう」、「何が書いてあったかわかった人は手を挙げて」という授業をしていました。
しかし、あるとき気がつきました。子どもはどのように答えれば先生が満足するのかだけを考え、それに沿って覚えていることを口にしているだけなのではないか――。要は、子どもが全く頭を使わない授業になってしまっていたのです。だからこそ、この教え方ではだめだと思い「教え方の改革をしなければ」と強く思ったのです。
もちろん、物事を考えるためには、最低限の基本的な知識や概念を知っていることが必要です。しかし、「考える」ことと「知識を習得する」ことは、本来は隣り合わせのような概念です。「まずは知識をしっかり覚え、それから考える」という仕方には賛成できません。
実際、フィンランドの学習指導要領では、「何をどのように学ぶか」が最大の問題であり、量をこなすことが問題ではないという点を強調しています。勉強の進め方に沿っていうなら、まずは「どのように学ぶか」を教え、その次に「どのように問題を解決するのか」という方法と、実際にそれを使うことを教えます。あくまでもこの2つが重要で、知識を身につけるのはその次の段階です。
フィンランドでは「Leaning to learn」という考え方が根底にあり、知識はそのために必要なもの、という捉え方をしています。
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