新学習指導要領へのアプローチ 第1回 「言語活動」で広がる学び
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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日本の教師の熱意と経験を洗練されたメソッドに

 日本でも、学習指導要領の改訂を受け「読解」に対する関心が高まっていると聞いています。2007年11月に、関西地区を中心に日本の学校を訪問しましたが、「なんとかして教育を良くしたい」と先生方が真剣に考えていること、そして新しい教育方法を熱心に学ぼうとする先生が大勢いらっしゃることに驚きました。こんなに強い思いは、世界中どこでも感じたことはありません。授業の事前準備をしっかり行い、自作のプリントを用意してくる先生。黒板にどのように書くか、板書計画をきちんと立てている先生。私は日本語は理解できませんが、そのくらいのことはすぐわかりました。ここまで一生懸命な教師は、フィンランドにはほとんどいないでしょう。
  ただ、授業をいくつか見るうちに「なぜ今この活動をしているのか」ということを深く突き詰めずに進む授業も多いことに気がつきました。例えば、子どもを静かにさせるのはとても上手なのに、静かにさせるだけで終わってしまい、肝心の子どもが全く頭を使っていない授業が見受けられました。
  また、子どもに一斉に音読をさせる形式の授業では、読み始めた瞬間に、40人のクラスのうち10人くらいの子どもが、明らかについていけていない状況が見られました。一律のスピードについていけない子どもは、文字を目で追っているだけで必要な学習ができませんし、逆にすらすら読む力がある子どもにとっては、無意味な学習の時間になってしまいます。私なら、黙読のあとに、「1人で課題に取り組む『力のある子』のグループ」、「『グループでなら課題に取り組むことのできる子』のグループ」、そして、私が「『つきっきりで読み方を教える』グループ」の3つに、クラスを分けていたと思います。
  日本の先生方の「すばらしい教育をしたい」という思いを子どもの力に変えていくためには、明確な目的と「具体的にどうすればよいのか」という手立てを持っていることが大切です。経験を集約し、合理的なメソッドとして洗練させていくことで、今後、日本の先生方の熱心な力を最大限に生かしていくことができると期待しています。

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