事業の背景にはいわゆる「小1プロブレム」(P.
1注1)がある。京都市教育委員会(以下、市教委)の松尾真由美首席指導主事(幼稚園教育担当)は教育現場の現状に懸念を示す。
「全国的な傾向ですが、京都市の小学校でも、低学年を中心に、じっくりと話を聞けない、授業中に走り回るといった子どもがいて、授業が成立しない状況が目立つようになりました。こうした現状に対応するため、幼小連携に着目しました」
幼小連携事業が実現した背景には、京都市の教育施策が幼小連携の実施に合っていたことも大きかった。
「京都市の公立幼稚園の教師は98年度の採用以降、全員、小学校教諭免許を取得しています。また、行政職ではなく、小学校教員と同じく教育職に区分されているため、制度面での障害がありませんでした」(松尾首席指導主事)
国の教育施策の動向も視野に入れている。05年に中央教育審議会が今後の幼児教育の方向性を示した答申「子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について」では、幼児教育の方向性の柱の一つに「幼児の生活の連続性及び発達や学びの連続性を踏まえた幼児教育の充実」を掲げている。具体的な取り組みとしては幼小教員の「人事交流の推進、奨励」が打ち出され、文部科学省は06年に「幼児教育振興アクションプログラム」を策定した。この中で「各都道府県において、少なくとも1例以上、幼稚園と小学校間の長期にわたる派遣研修、もしくは人事交流を実施する」という目標が示された。
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