京都市の実践は小学校低学年での指導に生かされようとしている。小野先生は「小学校での指導は一から始めると考えられがちですが、そうではないと実感できました」と話す。
「保育を通して就学前の子どもたちの姿や発達段階を知り、子どもの力や成長がつながっていることを強く実感できたのです。幼小双方が違いや共通点を知りながら、接続期の子どもが一人の人として成長する上で大切な支援とは何かを、共に探っていくことが大事だと思います」
那須先生は、小学校に入学しても教師や友だちと直接触れ合う機会を大事にしたいと思った。そこで、教室には自由に使える空間や温かみのある環境にすることに取り組んだ。一年を通して、教室の後ろの空間に子どもたちを集め、触れ合える距離で本の読み聞かせを続けると共に、本を通して子どもが共感し合える場をつくる取り組みを続けた。
「次第にその時間が好きになり、本に興味を持つ子どもが増えました。低学年にはもっといろいろな感情を交流させる場が必要だと思います」
また、那須先生は、低学年の教室には植物や飾りを置くなど、温かみのある環境にすることを提唱する。
幼稚園から子どもの様子を小学校に伝える書類に指導要録がある。ところが、小学校には、幼稚園、保育園や国・公・私立など、さまざまな幼児教育施設から入園してくるので、『偏見を持ちたくない』と読まない小学校教師が多い。
「本人のことを知らずに読むと内容がわかりづらいと思います。それでも、幼稚園の教師は心を込めて書いています。また、わからないことは、幼稚園や保育園に聞ける関係を築くことも大切でしょう」(濱田先生)
多田首席指導主事は、更なる取り組みの広がりを期待している。
「異動していた教師が元の学校に戻って実践することで、より大きな成果が表れるでしょう。同時に報告会などで積極的に発信し、市内の学校に広めていきたいと考えています」
子どもの成長は連続している。これまでの幼稚園と小学校がお互いをあまり意識してこなかったその事実を軸として、京都市の教育は新たな段階に入ろうとしている。
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