さいたま市の公立小学校における英語教育は、2005年3月に内閣府から「小・中一貫『潤いの時間』教育特区」の認定を受けて、同年4月に「潤いの時間」が創設されたことが始まりだ。「潤いの時間」は、国際社会をたくましく豊かに生きる子どもの育成を目的としている。その柱は、人間関係を構築する際に必要となるスキルを身につけさせる「人間関係プログラム」と、英語によるコミュニケーション力を育成する「英会話」だ。
「総合的な学習の時間」等を使った英語活動も1年生から行われているが、特区として実施する「英会話」は小学5年生~中学3年生が対象。06年度に研究指定校7校が先行して始め、07年12月からは市内の全公立小・中学校で実施された。小学校5、6年生の授業は、週1回の年間35時間で、さいたま市教育委員会と学校が協力して開発した英会話カリキュラムに沿って進められる。
「英会話」のねらいは、英語によるコミュニケーション能力の育成だ。具体的には、次の3要素を設定している。
(1)資質―積極的にコミュニケーションを図ろうとする意欲・態度
(2)能力―相手の情報やメッセージを正しく理解し、自分の気持ちや考え等をわかりやすい方法で相手に伝える
(3)ソーシャルスキル―話し方のルールやマナー
特筆すべきは、明確な評価規準が設定されていることだ(図1)。カリキュラム各段階の目標が3要素の何に当たり、どのような評価規準となるかが明確に記されている。統一規準をつくることで各校の裁量で進められていた英語活動のバラツキが是正され、中学校とのスムーズな連携が可能となった。
評価の対象は、発音や文法の正確さではなく、コミュニケーションへの積極性と意欲だ。さいたま市教育委員会学校教育部の利根川恵子副参事は、「教師は完璧な英語を使う必要はありません。間違ってもいいから一生懸命に英語を使おうとする姿勢を示すことが重視されています」と説明する。小学校で養うべきは、子どものコミュニケーションへの意欲と積極性と位置づけているのだ。
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