「英会話」では1コマの授業の流れが示されている(図2)。まず声を出す、体を動かすといったウォームアップによって英語を使う雰囲気をつくる。次に、ゲームなどをしながら新しい表現を学び、今まで習った表現を組み合わせながら友だちや先生とのコミュニケーションやプレゼンテーションができる段階への到達を目指す。
ポイントは図2の4と5の結び付きだ。4「目標表現に慣れ親しむ活動」で恥ずかしがっている子どもがいれば、教師はその子を励まし、抵抗感を取り除くようにする。これがうまくいけば、5で「人とかかわることは楽しい」と実感でき、コミュニケーション能力が育まれる。このように授業の目標を明確に設定すれば、このパターンに沿って授業を進められる。汎用性の高い授業モデルといえるだろう。
「英会話」の導入をきっかけに、子どもはよい方向に変わりつつある、と利根川副参事は話す。例えば、寡黙だった子どもが、1年後には英会話の時間には自分から話すようになった。
「子どもにとって、英語を使うと日本語とは別の感覚に入っていけるようです。日本語の世界では実現できない自分が、英語の世界で実現できるという子どもがいて、その子にとっては自己を表現できる場になっているのでしょう」(利根川副参事)
国語で話し合い活動に力を入れていた教師からは、英会話導入以降、子どもたちの討論・意見をまとめるといった力が目に見えて向上したとの報告があった。
このように、さいたま市が開発した英会話のプログラムは、大きな成果を上げつつある。コンセプトである「英語を通したコミュニケーション力の育成」は、文部科学省が提唱する「外国語活動」の目的と非常に近く(P.4~5参照)、11年度からの高学年への外国語活動導入を控える小学校にとってよいモデルケースの一つといえるだろう。 |