新学習指導要領へのアプローチ 第2回 学びが深まる「算数的活動」
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
   PAGE 1/15 次ページ

新学習指導要領へのアプローチ 第2回
学びが深まる「算数的活動」

2011年度から全面的に施行される新しい学習指導要領では、理数教育の充実が柱の一つとなっている。
中でも算数については、大幅な授業時数の増加に加え、「算数的活動」や「反復(スパイラル)」による指導の充実などが打ち出されている。
今後の算数の指導には何が求められているのか、研究者の知見や実践事例から考える。

【課題整理】 新しい学習指導要領のメッセージ

「算数的活動」を軸にした
活用・探究型の授業への転換が求められる

新しい学習指導要領で、大幅に指導内容や授業時数が増えた算数。
改訂の背景やねらいについて、改めて確認しておきたい。

理数教育の充実を打ち出した新しい学習指導要領

 2008年3月に告示された新しい学習指導要領では、「理数教育の充実」が大きなポイントとなっている。子どもたちの理数系離れの傾向は以前から指摘されてきたが、近年は、PISAやTIMSS(注1)など、国際的な学力調査の結果から日本の子どもたちの理数系教科に対する興味・関心や学力の低下を不安視する声も上がっている。
 科学技術立国を目指す日本の社会を担う子どもたちにとって、これは大きな問題といえる。新しい学習指導要領が理数教育の充実を打ち出した背景には、日本の将来に対する強い危機意識があるといってよいだろう。

注1 PISA…OECD(経済協力開発機構)「生徒の学力到達度調査」
TIMSS…IEA(国際教育到達度評価学会)「国際数学・理科教育動向調査」
PICK UP 小学校「算数科」改訂のポイント

文部科学省「幼稚園教育要領、小学校学習指導要領 及び中学学習指導要領の改訂案等のポイント」 「各教科等の改訂案のポイント」を要約

 

基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着のため、発達や学年の段階に応じた反復(スパイラル)による指導を充実(複数学年にわたり指導内容を一部重複させるなど)。
国際的な通用性、内容の系統性の確保や小・中学校の学習の円滑な接続等の観点から、必要な指導内容を充実(図形【合同、対称など】や数量関係【文字式など】に関する指導の充実など)。
知識・技能を活用する力を育成し、学ぶことの意義や有用性を実感できるよう、数量や図形についての知識・技能を実際の場面で活用する「算数的活動」を指導内容として学習指導要領に規定。

 

(1)学習内容の改善・充実

 内容構成の見直し等
「数と計算」「量と測定」「図形」「数量関係」の4領域に加え、新たに【算数的活動】を指導内容として規定
複数学年にわたり指導内容を一部重複させるなどにより、基礎的・基本的な知識・技能を確実に定着(例…第1学年で簡単な2位数の加減を導入的に扱い、第2学年で2位数の加減を本格的に指導。第4学年で整数の計算の定着と活用を指導)
  第1学年及び第2学年
◎1年 絵や図を用いた数量の表現、量の大きさ(面積、体積など)の比較
◎2年 簡単な2位数の乗法(1位数×2位数)、簡単な分数(1/2など)
  第3学年及び第4学年
◎3年 3位数×2位数の乗法、小数や分数の意味と表し方及び加・減など
◎4年 整数の計算の定着と活用、同分母分数の加・減など
  第5学年及び第6学年
◎5年 素数、台形の面積、異分母分数の加・減、図形の合同など
◎6年 小数や分数の計算の定着と活用、角柱や円柱の体積、拡大図と縮図、対称な図形(線対称、点対称)、反比例、文字を用いた式など

 

(2)言語力の育成・活用の重視

新設の【算数的活動】において、「言葉、数、式、図を用いたりして考え、説明する活動」、「目的に応じて表やグラフを選び、活用する活動」などを規定


   PAGE 1/15 次ページ