新しい学習指導要領の中で、各教科を貫く重要な視点として示されているのが、「言語活動の充実」です。「算数科で言語活動を充実させる」とは、一体どういうことなのでしょうか。
現行の学習指導要領では、言語活動についてはどちらかというと「話す」「聞く」といったコミュニケーション活動に重きを置いています。一方、新しい学習指導要領では、思考や認識の道具として言語を使いこなす力を育むことも、コミュニケーション活動と同様に重視されています。
算数科にとっての「言語」は、狭義の「言葉」だけではなく、数、式、図、表、グラフも含んでいます。子どもがある事象を「算数の言語」を使って論理的に考えて導いた結論を、筋道を立ててまわりの人に説明できる力を鍛えることこそが、算数科で求められる「言葉の力」です。
例えば、「スーパーに買い物に行ったら、200円のミネラルウォーターが2割引で売られていたので買いました」という事象を式に表したり、図やグラフに置き換えさせたりします。そして、自分が導き出した答えを、クラスメイトに説明させます。子どもが自ら式をつくり、説明をすることによって、論理的思考が磨かれ、表現力も身についていくのです。
算数の授業では、教師は子どもから期待していた答えが返ってくると、「みんな、わかったね」と、そのまま授業を進めてしまうことがあると思います。ところが、答えた子どもはわかっていたとしても、ほかの子どもはわかっていないかもしれません。あるいはその子どもの理解度も、実は十分ではないかもしれません。
そこで、重要になるのは、「答えが出た理由をきちんと話してみて」と子どもに説明を求めることです。説明の場面を意識的につくることによって、学習事項に対する子どもの理解度が、より確かなものになります。言語活動を充実させることは、習得事項の理解度を深める上でも有効なのです。
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