VIEW'S REPORT
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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小学校英語の必修化で意欲の高い生徒が増加

 今回の現地調査では、ヨンジ初等学校に続いて4校の高校を訪問し、授業や学習の様子、小学校英語の影響などについて調査した。  韓国の小学校英語必修化にかかわる興味深いデータがある。03年度および06年度に実施したGTEC調査において、必修化前の03年度の高1・2年生と、必修化後の小学校英語経験者である06年度の高1・2年生のスコアを比較したところ、06年度生の方が、03年度生に比べてトータルスコアで45.1ポイント高い結果が出た。この結果が小学校英語の必修化によるものなのかを明らかにすることも、高校取材の目的の一つであった。  韓国の高校での授業はほとんどが英語で進められ、レベルは日本の高校に比べて総じて高い。英語の使用経験については、英語力向上のためにテレビやインターネットを必ずしも意識的に活用しているとは限らないようだ。ただし、英語力の高い生徒は、家族と英語で話したり、母国に戻った塾の英語教師と英語でメールのやりとりをしたりするなど、生活の中で意図的に英語を勉強している。

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◎天気のゲームのための教材。韓国の小学校の教科書には、全学年とも絵や数字のカードが添付されており、切り取って使えるように工夫されている

 「小学校英語の導入前後で生徒に変化があるか」という質問に対しては、どの学校の教師も、英語力自体が高まっている実感はないという。ただ、教師が口をそろえて指摘するのは意識面の変化だ。必修化後は、積極的に英語を活用しようとする生徒が多いという。実際、高校の授業を見ると、ペアワークや発表など生徒の発話の機会が多く設けられ、生徒は積極的に英語を使っていた。小学校から英語に接してきたため、英語を使うことに対する抵抗感が少なく、積極的に自分を表現できる生徒が多いようだ。
 今回の現地調査では、近年、特に小学校において韓国の英語教育が大きく進歩している様子が見て取れた。11年度から小学校高学年で外国語活動が必修化される日本でも参考になる点があるのではないだろうか。
 詳細な調査結果については、今後、ベネッセ教育研究開発センターにおいて分析を行い、韓国における高校生の英語力向上の背景、日本の英語教育への応用などについて明らかにしていく。それについては、08年秋以降、報告書としてまとめる予定である。

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◎教科書のワークに取り組む小学校5年生の児童。5年生になると基本単語の読み、書きの練習を行う。写真の児童は、イラストを見ながら、正しいスペルになるよう文字を囲んでいるところ

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