地方分権時代の教育行政 宮城県仙台市


概略

■宮城県仙台市

人口約103万人の政令指定都市。東北地方の拠点都市として発展してきた。教育行政では、家庭、地域、学校、企業などによる「パートナーシップ」をキーワードに「学都仙台」づくりを進める。市立小学校123校、市立中学校63校。

 

【仙台市教育委員会】

〒980-8671
宮城県仙台市青葉区二日町1-1
TEL 022-214-8875(教育指導課)
URL http://www.city.
sendai.jp/kyouiku/index.html

庄子修

▲仙台市教育委員会
学校教育部教育指導課課長

庄子修

Shoji Osamu

堀越清治

▲仙台市教育委員会
学校教育部教育指導課
主幹兼教育課程係長

堀越清治

Horikoshi Seiji

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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地方分権時代の教育行政
地方自治体の学校教育への新たな取り組み

宮城県仙台市

学力向上に向け、家庭学習ノートや
教科担任制などを導入

仙台市では、中学校卒業から10年後の「25歳」での自立した姿をイメージした「自分づくり教育」を進めている。自立するための大きな要素の一つを学力と捉え、2006年度から「家庭学習ノート」や「小学校高学年基礎教科担任制モデル事業」などの学力向上策に力を入れている。

親子の対話を深める 「家庭学習ノート仙台」

 仙台市教育委員会(以下、市教委)は、学校教育の重点施策や指導の重点をまとめた「杜の都の学校教育」を毎年策定し、公立学校の教師全員に配付している。2008年度版では「健やかな心と体の育成」「確かな学力の向上」「自分づくり教育の推進」を柱に掲げた。学校教育部教育指導課の庄子修課長は三つの柱の意図を次のように話す。 
 「社会や家庭環境の変化もあり、仙台市でも子どもを学びに向かわせることが課題です。しかし、単に学力向上のみを目指すような施策では不十分。学習の基盤となる『健やかな心と体』、なぜ今、勉強するのかを子どもに考えさせる『自分づくり教育』こそが先決だと考えました」
 市教委は「社会を支える25歳を目指して」をスローガンに、小中高12年間のカリキュラムを作成した。市教委がかねてから進めてきた起業教育と文部科学省が進めるキャリア教育を土台に、各学齢で必要な学習内容や学習姿勢を明らかにした。
 「教室に『目指す子ども像』を掲げても、『目指す大人像』を示すことがあったでしょうか。25歳は中学卒業後10年目でほとんどの子どもが社会に出ています。この年齢を共通の目安として自立した姿を思い描きながら、社会全体で子どもを育てていこうと考えています」(庄子課長)
 小学校段階での施策の一つは、06年度から配付している『家庭学習ノート仙台』だ(図1)。教科書に沿った家庭学習用ワークブックで、学習上つまずきが多い3年生の算数と5年生の国語を作成。主に単元終了時の課題や宿題としての活用を促す。

図1 家庭学習ノート仙台「いっしょに算数」

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「おうちの方へ」では、測定について家庭でどんな話題を取り上げればよいのかを示している

 「小学校段階では毎日机に向かう習慣の確立が大切です。その際に温かな家庭環境の中で保護者が子どもをしっかり見守ってほしいと思い、作成しました」(庄子課長)
 家庭で使いやすいよう、作成にはPTAも加わった。特徴は二つ。一つめは「おうちの方へ」の欄だ。保護者が子どもにどのようにかかわればよいのかを単元ごとに簡潔に解説。算数の長さの単元では「お子さんが長さの測定に関心を持つよう、山の高さや湖の深さを話題にする」と具体的なアドバイスを盛り込む。
 特徴の二つめは「おうちの方から」の欄の大きさだ。印鑑を押すには大きく、コメントをたくさん書くにはやや小さいスペースにした。庄子課長は、「共働き家庭などに配慮して、コメントを書く・書かない、どちらにも対応できる大きさにしました。このような細かい点についても保護者と議論を重ねました」と話す。
 保護者からは「学校での勉強の様子がよくわかるようになった。子どもがよく学校の話をしてくれるようになった」といった声が届いている。
 「これが親子のコミュニケーションのきっかけになればと考えています。保護者が子どもと向き合い、かかわることが、子どもの心の安定につながり、ひいては学力向上の土台になると考えています」(庄子課長)


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