足利市は、2003年度に国の英会話教育特区に認定された。04年度、同市立けやき小学校を含む五つの小学校がモデル校に指定されたのを皮切りに、全学年を対象とした「英会話学習」を開始した。05年度には、教育委員会が毎時間のテーマとなるキーセンテンスと指導案が載った年間指導計画を作成。けやき小学校でも、この年間指導計画をアレンジして、児童の実態に合った独自の授業案を作成している。英会話学習では「聞く」「話す」を重視し、コミュニケーションの基礎的な能力を養うことを目標としている。これは、11年から本格導入される「外国語活動」のねらいと重なる。また、導入当初から「T1は学級担任」という方針で、授業中担任が前に立ち、児童の様子をしっかり把握した上で授業づくりをすることを重視してきた。
同校は、前述した市の方針に沿って英会話学習に取り組み始め、09年度で6年目になる。学級担任をT1とした、ALTとのチームティーチングによって、次のような授業展開が定着している。
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イントロダクション(5分)
英語であいさつし、英語の歌を歌う
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前時の復習(5分)
前回習ったキーセンテンスをALTに続いて復唱する
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ティーチャーズ・トーク(5分)
担任とALTが、本時のキーセンテンスを使った自然な会話(ドラマ)を英語で実演。内容を子どもに推測させ、難しい点は説明をした後、ALTと共にキーセンテンスの発音練習をする
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アクティビティ(25分)
キーセンテンスを取り入れたゲームを実施
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レビュー(2分)
ALTが指示し、本時のキーセンテンスを復習する
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まとめ(3分)
終わりのあいさつをしたら、子どもは1人ずつ、担任・ALTと本時のキーセンテンスを確認して教室を出る
6年生の担任として英会話学習を指導する湯澤典子先生は、「英語に触れることで、興味を持ち、英語を使ってみようと思ってほしい。同じ人間として、外国人と垣根なく交流できるようになることが学習のねらいです」と語る。そのため、ドラマの中では子どもが興味を持てるスポーツや日常生活を題材に選んだ上で、自然な英語表現や前時で学んだセンテンスを入れることを心掛けている。
会話のすべての内容は理解できなくても、推測し、意味を把握することがコミュニケーションでは大切であると考え、子どもにも分かる単語を使用したり、担任とALTの身ぶりなどから話の流れを考えて発表させる活動も盛り込んでいる。一方、英語に対する苦手意識を持たせないために、子どもが理解しにくい部分は担任が日本語で丁寧に説明する。授業の冒頭に前時の復習を入れることによって、児童に「聞いたことがある」「英語が分かるかも」と思わせ、英語に親しみを持たせることも工夫の一つだ。
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