まず、担任が英語を楽しむ。その上で役割分担 |
英語の専任教員がいない小学校では、英語に苦手意識をもつ教員も少なくない。
大橋先生は「まず、担任の先生が楽しむことが大切」と訴える。英語はコミュニケーションの手段であり、先生が楽しんで活動に取り組まなくては子どもが楽しく活動できないということだ。 |
英語活動を楽しむためには、英語に親しみ、苦手意識をなくすことが重要だ。そのために研修も積極的に行われている。
職員研修は、英語文化教育スペシャリストでCALA(※2)代表の阿部フォード恵子先生を講師に迎えた。教師自身が英語に親しみ、楽しんで英語活動が行えるように、ゲームや歌などが中心のワークショップ形式で実施された。
また月1回、放課後を利用してALTとの英会話研修を実施。自己紹介、旅行、レストランなどテーマを決めて英会話を行い、教師の英語力を伸ばすだけでなく、ALTとのコミュニケーションを密にする効果も高い。 |
その上で、担任とALTで役割を分担する。
クラスの子どもの様子を最も把握しているのは、担任である。だから、担任は、子どもたちの実態を踏まえて活動の計画を立てることができ、毎時の活動において子ども達に合わせて英語活動を行う進行役となることができる。一方、ALTは正しい発音を教え、子どもたちとかかわりコミュニケーションの楽しさを感じさせることに力点を置く。
そのように担任が主導で英語活動を進めているため、ALTがいない時間や別のALTが参加する時間も、普段の活動と同じように進行させることが出来るというメリットがある。 |
※2 CALA:Communication And Language
Associates 児童英語とその指導者のための研究・研修活動を行っている。 |
WCP Approachで1時間ごとの実践内容を共有化 |
1時間ごとの活動は、活動の組み立てモデルを作成しそれを活用している。WCP(Warming
up/Core Learning/Practice)Approachと呼んでいる活動モデルで、それを全学年の教師が実践することで、教師による英語活動の差が出るのを少なくしている。
今回見学した小学5年生の英語活動では、あいさつからチャンツまでが、Warming up、表現方法の練習がCore
Learning、ゲーム2つがPracticeと位置付けられている。 |
発達段階に応じた目標を設定し、6年間の活動計画を作成 |
同校の英語活動の特色は3つ。一つ目は活動しながら身体で学ぶということ。二つ目は、子どもの日常生活の中で身近な英語を扱うことに重点を置き、楽しさの中に英語に慣れ親しむことができる活動であること。三つ目は文字よりは音声でのコミュニケーションに重点を置くということ。英語に親しみ、自然に英語を使えるようになるよう考えられた。それらは、同校がH13年度から作成している英語活動の年間計画として盛り込まれている。 |
同校では、1・2年生が年間17時間、3年生~6年生では年間35時間の英語活動が行われている。英語活動には、すべての時間ALTが参加し、担任とTTを行っている。 |
英語活動の年間計画には、発達段階に応じて低学年では「触れる、楽しむ」、中学年では「感じる、知る」、高学年では「つくる、考える」が目標として設定されており、系統的な英語力の育成が図れるようになっている。 |
鳩森小 の英語活動年間計画の一部
1年生~6年生が、各月で学ぶ英語のセンテンスや時数が一覧になっている
<クリックすると全体を表示します(PDFファイル)>
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毎時の活動内容は年間計画を元に指導案を担任が作成し、ALTと共通理解を図る。H13、H14の実践を踏まえて見直しが行われ、現在、3年生以上では今回の"I’m
sick."の活動がそうであるように、1つのテーマを2~3時間扱いにし、発展的に学習できるように工夫されている。 |
コミュニケーション力を実感する子どもたち |
同校の英語活動の成果として、同校が実施した「英語活動についてのアンケート(2003.7実施)」の結果から、英語に対する抵抗感が減り、「日常生活に役立つ英語である」と気づき、英語が使えることが自分のためになっていると感じる子どもが増えているという。同校の目指す「聞いて、話して、心を通わせる」英語が子どもたちに役立つ力として実感されている証拠であろう。 |
鳩森小学校実施『英語活動についてのアンケート調査』 (2003.7)
鳩森小の児童へのアンケート結果より
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ただ、簡単な表現のくり返しは英語力の高い子どもには退屈に感じられ、難しい表現への挑戦は英語力に不安のある子どもには難しくてついていきがたく感じられてしまうことが今後の課題のようだ。 |
今回取材した鳩森小学校の取り組みは、今後、英語活動に取り組んでいきたいと考える小学校にとって、いろいろなヒントを与えてくれることだろう。 |