小学校英語活動 Vol.3 沖縄県那覇市


那覇市データ
 沖縄県内には国内駐留軍施設の75%にあたる米軍基地を抱えており、県民は外国人と接する機会が多い。現在、「国際社会に活躍する人材育成の推進」が施策の一つとして掲げられている。県都那覇市は沖縄本島の南部に位置し、県の人口の4分の1に当たる約31万人が集まる。市内には公立小学校36校(児童数20,833人)、中学校17校(生徒数9,828人)があるが、近年のドーナツ化現象によって、市の周辺地域の学校の規模が拡大する一方で、中心部の学校では児童・生徒数の減少が見られる。


那覇市教育委員会
住所 〒900-8553
沖縄県那覇市樋川2-8-8
電話 098-832-4166(学校教育課)
FAX 098-831-9048(学校教育課)
URL http://www.nahaken-okn.ed.jp/
教育長 仲田美加子氏


高良政幸指導主事

高良政幸指導主事
那覇市の英語教育の推進役。「もともと小学校現場にいましたから、小学校の先生方の戸惑いもよく理解できるつもりです」

WEB版 VIEW21[小学版] 教育情報レポート ~小学校英語活動~
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小学校英語活動 Vol.3
沖縄県那覇市

市教委のリーダーシップで 全市をあげて取り組む英語教育

那覇市は日常的に外国人と接することが多い国際都市。そのため、外国人とのコミュニケーション能力を身につけることは、子どもたちにとって大きな課題で、市長の公約にも、「小学校英語教育の充実」が掲げられている。2003~05年度、文部科学省開発学校の指定を受け、市を挙げて英語教育の研究に取り組んでおり、すでにリスニングテストなどで順調な成果を上げている。その成功のポイントは何か、さらにどんな課題が生まれているのか、那覇市教育委員会と拠点校の取り組みを通して紹介したい。



● 那覇市小学校英語活動のPOINT
(1)

音声指導が中心で、「たっぷり聞かせる」を目指す。文字指導は行わない。

(2) 市内の小学校を5つのグループに分け、各グループに拠点校を1つずつ設け、グループごとに研究を推進。
(3) 小学校の研究拠点校には、中学校の英語科教員を加配。研究の推進役を担う。
(4) 4種類の指導形態を設定し、各学校はいずれかの形態を研究。各グループには、それぞれの指導形態が混在するように配慮。
(5) 中学校区内で、小中相互に授業参観。情報交換と小中連携を模索している。
(6) 市の教育研究所内に英語教材コーナーを設置。図書搬送システムを活用して、市内全域で教材活用の便宜を図っている。

研究3年目でようやく軌道に乗りはじめた

 那覇市の英語教育の第1の柱は、小学校に「英語科」を設け、音声指導に徹した授業を行うことだ。つまり、「たっぷり聞かせる」ことを目指し、文字指導は行わない。

 3年目の今年度はかなり安定した授業が進められているが、初年度は混乱も少なくなかったと那覇市教育委員会で英語教育の研究開発を担当する高良政幸指導主事は言う。

「『なぜ小学校で英語を教えなければならないのか』という疑問の声が強かったのです。だから初年度は、英語指導員(AET、JTE)に任せっきりの担任も多かった。AETやJTEは、担任とTTをするということで派遣されていますから、そちらからも不満が出てくる。各学校の研究主任を集めては繰り返し説明し、また、学校に出向いては理解も求めてきました。

  那覇市では、毎年、1校で3分の1近い先生が異動します。市内の異動なら影響は少ないですが、他地区からの異動者には戸惑いがあります。那覇市の英語教育の方針を理解してもらい、それを早く解消するような校内体制づくりを各学校に求めてきました。3年目の現在、ようやく軌道に乗ってきたといえます」


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