和歌山県知事
木村良樹
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知事が語る教育改革
●「頑張ることの大切さ」を教育に取り戻したい
和歌山県では現在、岩手・宮城・三重・福岡県などと連携して「地方分権研究会」を立ち上げ、「構造改革」にチャレンジしようとしている。教育改革もその1つで、「世界に通用するリーダー養成校設立」や「小学校での英語教育」など、いくつかの実行項目を掲げている。また、県立高校の学区制撤廃や、県立高と国立大学附属中による中高一貫教育を全国に先がけて行ったり、すべての公立学校をノースモーキングエリアとするなど、すでに県独自の教育改革も動いている。どのようなビジョンのもとで改革を推進しているのか、木村知事にうかがった。
中国や韓国などの子どもたちに接してみると、彼らが将来に夢を持って真剣に勉強に取り組んでいることをひしひしと感じます。そこには、豊かになった日本が失ってしまった目の輝きがあります。
戦後約60年間の教育で、うまくいっている部分もあります。そこを伸ばし、生徒の多様性も確保しながら「頑張ることの大切さ」を伝えていく教育が必要です。未来に生きる教育を和歌山県で確立したいのです。ただし、教育はローカルな視点ではなく、世界の人々と互角に渡り合える、グローバルな人材を育てなければいけないと思います。文部科学省の改革がなかなか進まないのなら、和歌山県が先陣を切って、教育実践のモデルをつくろうと考えているのです。
具体的な改革の一つは、これからの国際社会で活躍できる力を身につけることです。そのために、特にコミュニケーションの手段としての英語教育には力を入れていきます。また、単に英語が話せるだけでなく、日本の文化や伝統をしっかりと踏まえて表現できる国際人を育てていきたい。4月からは、小・中学校のモデル校で「英会話」の時間を設けますし、「地方分権研究会」のプロジェクトでは、小学校英語教育に関してのカリキュラムづくりを進めています。
また、今は、伝統のある大学へ行くために、私立の中高一貫校などに行かせる風潮がありますが、お金もかかります。地方の子どもにはそうした機会すら与えられていません。これでは、学力や学習意欲以外の要因で進学先が決まってしまい、結果として日本全体の活力を削いでしまうかもしれません。公教育がすべきことは、IT技術などを活用して、たとえ地方に住んでいても、高いレベルの教育をリアルタイムに安価で受けられるような道を設けることです。
最後に、先生方に申し上げたいのは、全人的に命がけで生徒に接してほしいということです。そして、先生自らが範を示し、生徒に尊敬され、人生のモデルとなるように努力する必要があると思います。(談)
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