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三宅なほみ
1949年生まれ。 東京都出身。お茶の水女子大文教育学部卒業。カリフォルニア大学サンディエゴ校心理学科博士課程修了。青山学院女子短大助教授を経て現職。近年、認知科学、認知心理学をベースにした学習のメカニズムとその支援についての研究に取り組む。著書に『インターネットの子どもたち』(岩波書店)、『学習科学とテクノロジ』(放送大学教育振興会、共著)など。
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インタビュー
三宅なほみ 中京大・情報科学部教授 |
生徒同士の協調による学びが
生徒の知識に深みを与える |
生徒自身の学び合う力を生かしてより深く知識を獲得させようとする新しい試みも生まれている。協調型の学習に関する研究に取り組む三宅なほみ教授にお話をうかがった。
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教師が答えを教えない生徒自身による学び |
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生徒にある知識を獲得させたいとき、大きく分けて二つの方法があると思います。一つは教師の側からの知識の教授。教師は、生徒の理解度を深めるために実験を取り入れたり、日常的な体験と結びつけながら抽象度の高い法則を説明したりといった工夫はしますが、基本的には教師が持つ知識を生徒に伝授するという形をとります。
もう一つ、これとはまったく異なるのが、ほかの生徒との協調型の学びのなかで、生徒に知識を獲得させる方法です。教師が生徒に解を教えるのではなく、クラスを構成する生徒がお互いに異なる視点から多様な解を出し、吟味を重ね、生徒自身で正しい解を導き出すように教師が仕向けていくのです。「協調型の学習」と呼ばれるこの方法は今、学習科学の分野で大変注目を集めています。アメリカのある学習科学の研究者は、生徒に「できるだけ遠くまで走る車の開発」に取り組ませるなかから、「ニュートンの運動の三法則」(慣性の法則、運動の法則、作用反作用の法則)の知識を自分たちで獲得させる学習プログラムを開発しています。
プログラムでは、生徒を3~5人のグループに分けます。材料を渡し、「丘から滑り降りて、なるべく遠くまで走る車を作る」という慣性の法則にかかわるテーマを提示したあと、風船とストローを与えて、「風船がしぼむ力で、より遠くまで走るバルーン・カーを作る」という具体的な課題を設定します。最初は生徒の取り組みも、思いつきのレベルを超えませんが、試行錯誤を重ねるうちに、多様な解から、車を長く走らせる要因を明らかにしていきます。その後、図1のような流れで協調的な学習を進め、信頼できる実験結果が出るようになったら、各グループの実験結果をまとめると、最適な解が生徒自身によって導き出されます。 |
図1 「バルーン・カーを作る」にみる協調性の学習の流れ |
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また、教師は折に触れてニュートンの「運動の三法則」を生徒に説明します。すると生徒は、この法則を応用して、導き出した最適な解をより科学的に説明できます。「吹き出す空気の量が同じなのに、ストローの本数を増やすと遠くまで走るのは、いっきに空気を吹き出して車の動力を強くすると、加速度をつけられるからだ。加速度をつければ滑走に入るときの速度が速くなって、走行距離を長くできる」というように。 |
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