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観察力は導入期に重点的に養う
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大原先生は、理科における「考える力」とは、「自ら予測を立て、検証方法を考え、観察をし、分析すること」を土台として、物事を考えていく力のことを指すという。
「土台がない生徒は、思いつきだけでものを言います。でも土台があれば、予測、検証、分析を経た、きちんとした論拠に基づいて物事を考えられます。それが『考える力』だと思うんです。生徒には、考える力の土台となる部分をしっかりと身につけさせたい。そして、自分の考えを他者に的確に伝える表現力も磨いていきたいです」
もちろん、土台となる力は一朝一夕に習得できるものではなく、日々の積み重ねが不可欠となる。冒頭に挙げた「エネルギーの大きさを調べる実験」のような体験を繰り返すことで、生徒は力をつけていくのだ。
大原先生は、入学したばかりの1年生には、まず野外観察に取り組ませている。ノートとルーペを持たせて、花や昆虫のスケッチをさせるのだ。ただし、単に「観察をしなさい」と指示を出すだけではない。「花の花弁には“ハニーガイド”という、昆虫を蜜のある場所に導く模様があるものが多いんだよ。これは、花が虫に受粉を手助けさせる仕組みだよ。探してごらん」など、観察をする際の着眼点を生徒に与えたうえで、生徒を野外に送り出しているのだ。
「自然観察ではどこをどう見ればいいかというヒントをある程度示さないと、生徒の観察力は育っていかないものです」
さらに野外観察のあと、例えばある生徒がアリの観察をして、スケッチの横に「アリの体に白い毛が生えていた」というコメントを書いていたとする。大原先生はそんな「発見」が書き込まれたスケッチを、みんなの前で次のように“ベタぼめ”する。
「すごいところに気がついたね。アリの体に毛が生えているのは、どんな意味があるのだろうね。どんな小さなことでも気がついたところをスケッチして、その理由をちゃんと書いておくことを、観察というんだよ。絵がうまいかどうかではなくて、人に正確に伝わるように描くことが大事なんだよね」
すると、気づいていたけれどスケッチするほどのことではないと思っていたほかの生徒も、次回からは着眼点を持って注意深く対象と向かい合い、その結果をノートに書き込むようになる。観察力や表現力、問題意識を持って対象にアプローチする態度などを身につけていくわけだ。こうした力を1年生の段階で習得しておくことが、のちの理科学習のベースになるのだ。
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自然観察に取り組む前には、観察するうえでのポイントを生徒に伝える。そして、生徒の小さな発見も評価し、対象にアプローチする姿勢を身につけさせる |
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