教育現場の挑戦 [学力向上の取り組み]静岡県浜松市立蜆塚中学校

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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生徒が自分で学習の定着度を把握できる評価方法の工夫

 チャレンジ検定や質問道場などの成果を、生徒自身でも確認できるように行われているのが、年5回実施している定着度評価だ。蜆塚中学校では定期考査の代わりに、この定着度評価を実施している。実施時期は5月、6月、9月、11月、2月と、多くの中学校で定期考査が行われる時期とほぼ重なっており、出題範囲も最近の授業で習った単元のなかから設定される。
 ただし定着度評価が通常の定期考査と異なるのは、授業で習ったことがどの程度定着しているかが、生徒自身にはっきりと目に見える形で示されるということだ。
 定着度評価の試験が終了すると、生徒一人ひとりに向けて個別に作成された6枚の「学力分析表」が渡される。そのうち5枚は各教科別のもの、ほかの1枚は、主要5教科の生徒個人の成績を総合的に分析したプリントだ(図2図3)。

図2 学力分析表(5教科)
図2
最も成績が良かった教科を100とし、ほかの教科の到達度を数値化。得意教科と苦手教科の関係を端的につかむことができる
図3 教科別学力分析表(英語)
図表
各教科の成績をさらに詳細に分析。生徒は各教科の定着度を観点別に把握することができる
 図2から見ていこう。プリントの上のほうに「Balance Point(BP)」「Close Up Point(CP)」と書かれた表があり、その横に教科ごとに数字が書き込まれている。このうち「Balance Point」は、その生徒が最も成績が良かった教科を100として、ほかの教科の到達度を数値化したもの。自分にとっての得意教科と苦手教科の関係が一目でわかる仕掛けとなっている。つまり、個人内の評価を数値化している。
 また「Close Up Point」は、学年の中でその教科で最も高成績をあげた生徒を100として、本人の成績の位置を数値化したもの。この数値によって、自分の成績が学年集団のなかでどのあたりに位置しているのかがわかるわけだ。
 生徒はこの「Balance Point」と「Close Up Point」の数値を見ながら、プリント中央部にレーダーチャートグラフをつくっていく。そして各教科の反省と、今後の決意を決められた場所に書き込む。
 図3は、英語の成績をさらに細かく分析したものだ。蜆塚中学校の試験問題は各教科とも「表現」「知識」「理解」といった観点別に作成されており、試験を実施することによって観点別の定着度がわかる仕組みとなっている。生徒は渡された「BP」と「CP」の数値を見ながら、「ぼくは『知識』については申し分がないけれど、『表現』がいまひとつだな」というふうに、自分の観点別の定着度を的確につかめるわけだ。
 「生徒が自ら学びに向かうには、まず現時点での学力を正確に把握することが必要となります。それができてはじめて、『この分野は苦手だから補強して、この分野は得意だから伸ばしていこう』といった“学びの見通し”を、自分なりに立てるようになると思うのです。学力分析データを、教師の側からの一方的に示すのではなく、生徒が自分で分析して書き込む欄を設けているのも、そうしたねらいがあります」(田中先生)

写真2
写真2 自ら学習に向かうための仕掛けは、生徒同士の協調的な学びにも派生していく

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