特集 つながる小中の「学び」―小学校から中学校、その接続を考える―

広島県 呉市立二河中学校

1947年開校。造船や鉄鋼の町として発展してきた呉市の中心地に位置する。2000年度に文部省(当時)研究開発学校に指定され、隣接する二河小学校、五番町小学校とともに小中一貫教育の研究に着手。05年11月には6年間の研究の集大成となる研究発表大会が開かれた。

畠中和樹

校長 畠中和樹


生徒数 197人
学級数 7学級
所在地 〒737-0811 広島県呉市西中央4-10-52
TEL 0823-21-2828
FAX 0823-24-9848
URL http://www.city.kure.
hiroshima.jp/‾nikc/

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【実践事例】
広島県
呉市立二河(にこう)中学校

発達段階を踏まえた指導で小中の接続をスムーズに

二河中学校では、2000年度から、隣接する二つの小学校とともに、子どもの発達段階を意識した本格的な小中一貫教育を導入し、活発な研究を進めてきた。その結果、子どもの意欲や学力は大きく向上し、今後の義務教育に一つの可能性を示唆するものとなった。
その取り組みの中身を紹介する。

「6・3制」から「4・3・2区分」へ

 広島県呉市の中心部に位置する二河中学校は、文部科学省の研究開発学校の指定を受け、2000年度から隣接する二つの小学校(二河小学校・五番町小学校)とともに、小中一貫教育の研究に取り組んでいる。
  その大きな特徴は、現行の義務教育の「6・3制」の枠組みを変更し、前期(小1~小4生)、中期(小5~中1生)、後期(中2~中3生)の「4・3・2区分」のカリキュラムを採用している点だ。二河中学校がこの区分を設けた主な理由には、児童生徒の発達状況を再検証することで明らかになった次の3点が挙げられる。

(1)心身の発達の早期化
  身長の伸び率がピークを迎える時期は、1950年には男子が15歳、女子が12歳だったが、現在は男女ともに2年ほど早まっている。それに伴い心の発達も早まり、多くの子どもは小5生で思春期を迎える。そのため、従来の中1生よりも2年早い小5生を区切りとするのが適切と判断した。

(2)生徒指導上の問題
  呉市のデータでは、問題行動の発生率は小5生でやや増加し、中1生を境に急増する(図1)。その背景を二河中学校では、小学5・6年生は担任が寄り添うように指導することで問題の顕在化を防いでいるが、中学校に入ると教科担任制となり、教師との関係が急に希薄になるためと推測。対策として、小5~中1生を一つのまとまりとして捉え、緩やかに移行させることが有効と考えた。

図1
(3)学力形成の発達段階
  同研究の運営指導委員である広島大大学院助教授・井上弥氏(発達心理学)によると、小4生の後半ごろから言語や数を用いた論理的思考に興味を示し、小5生ごろから自己に対する関心も強くなる。そのため小4生と小5生の間に区切りを設けるのが適切と考えた。同様に、中2生ごろから具体物を用いなくても頭の中で考えを整理し、論理的・抽象的な思考が可能になるため、中1生との間に区切りを設定した。
  更に二河中学校が課題としたのは、中学校入学時に子どもが抱く“不安”だ。二河中学校の畠中和樹校長が話す。
  「以前は各校の間に交流がほとんどなかったため、小学生にとって中学校は未知の世界であり、進学後の人間関係や勉強に対して強い不安を抱いていました。このことも新入生にとっては小中間の精神的な壁となっていたため、小中一貫教育を通して、中学校生活へのプレッシャーを取り除くことも大きな目標になりました」(図2
図2 クリックすると拡大します
図2

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