特集 つながる小中の「学び」―小学校から中学校、その接続を考える―

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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予習よりも復習を充実させる

 また、牧田先生は、算数から数学への移行では、授業のスピードが速くなることに戸惑う生徒も多いと話す。
  「小学校ではクラスの担任が算数を担当するため、いろいろな時間を算数の復習や補習に充てることもできますが、中学校ではそれは難しい。とりわけ数学は、授業の振り返りが理解度に直結しますから」
  新たな学習課題は、予習で教科書の説明を覚えるよりも、授業中にしっかり考え、質問や意見を友だちと出し合うことが学びを深める。逆に、その後の学習でつまずかないためには、授業場面を振り返ることで理解が不十分な点を把握し、それを確実に理解することが大切だ。そこで牧田先生は、学習を振り返る指導にも力を入れている。
  その一環が、「不安な点・曖昧な点一覧」というプリントだ。これは、各単元に1回、ある程度学習が進んだ時点で、生徒から匿名で集めた疑問点をまとめたもの。「負の数」なら、「(-3)+(-3)は、-(3+3)と同じですか?」「+は、どういう場合に『プラス』、または『足す』と読むんですか?」など、各生徒が抱いていた質問が並ぶ。牧田先生は、授業の1時間を費やして、それらを題材にして授業を構成する。
  「ちょっとした疑問の場合、質問するのをためらう生徒が多いのですが、紙に書いて集めるとなんでも質問してきます。自分の質問が取り上げられるとあって、みんな興味津々という表情で授業に臨みます」
  更に、単元が終わった直後、そこで学んだ内容をレポートにまとめさせる。レポートの形式や分量は生徒に任され、自分のノートをそのまま書き写してもよい。
  「書き写すだけでも授業を思い出すので、有意義な復習になります。ただし、これは時間がかかるので、すべての単元ではなく、年に2、3回実施しています」
  牧田先生は更に、学習意欲を持続させるためには、単元ごとに“ストーリー”を設けるのが効果的だと話す。
  「毎時間、別々の内容を扱うという授業では、前回の学習を忘れやすくなります。逆に、いくつかの授業をまたぐような連続性のある展開が、意欲を持続させるためには理想的だと考えています」
  例えば、「北陸本線に列車を走らせよう」という主題で一次関数の学習を構成したり、「いつでも成り立つか」という大テーマのもと、数量や図形の命題を説明していこうとする。このことで内容同士がつながり、学びの意義が実感されるという。
  「数学は、答えに至るまでの過程も含めて『答え』だと考えています。ですから、最終的な答えをすぐに求めず、じっくりと考えさせる。それが『考えることは面白い』ということにもつながると思います」

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