特集 つながる小中の「学び」―小学校から中学校、その接続を考える―

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
  PAGE 16/17 前ページ  次ページ

言語の習得段階に応じて指導内容の比重を変える

 英語は数学と並んで、積み重ねが大切な教科だといわれている。だが北原先生によれば、同じ積み重ねでも、英語は数学とはかなり意味合いが異なるそうだ。
  「数学はある公式を学んだら、その公式を確実に使えるようにならないと次の単元がわからなくなることが多いと思います。しかし英語は、新しく出てきた単語や文法をその場で習得しなくても、次に出てきたときに覚えればいいのです。英語に限らず、人は言葉を何度も繰り返し使う中で覚えていくものだからです。だから私の授業では、習っていない単語や構文が出てくる歌を歌う一方で、既習事項についても繰り返し確認をしています。また生徒に対しても、『今わからなくても、やっているうちにスッキリと理解できるときが来るからあきらめてはいけない』と話しています」
  北原先生の指導の特徴は、子どもが言語を習得していくときの自然なプロセスを強く意識していることだ。私たちは母語を習得するとき、まず文法を学び、その文法に沿って具体的な表現のしかたを身につけていくわけではない。言葉のシャワーの中で、間違いを繰り返しながら、体験的に正しい用法を体得していくものだ。本来なら英語の習得過程も同じはず。北原先生が「意味がわからなくても、たくさんの英語と接するのが大切」と語るのはそういう意味だ。
  また子どもは言語を習得するときに、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を同時にレベルアップさせていくわけではない。まず聞く力と話す力がベースとなり、次に読む力、最後に書く力が身についていく。北原先生の3年間の指導展開も、こうした子どもの言語の習得過程に沿ったものとなっている。
  「入学時にまず徹底するのが発音です。歌もその一つですが、4~5月の時期は、リズムに合わせて、アルファベットの発音を繰り返し行います」
  そして教科書の音読。生徒には、家で5回教科書の音読をすると星一つが与えられ、最低でも星五つ分、つまり25回は音読してくることが宿題となっている。その努力は授業の中で生かされる。みんなの前で教科書の音読をする場面を必ず設定。また教科書に出てくる例文をもとに、自分なりのアレンジを加えさせながら、生徒数人でちょっとした寸劇を行うなど、発表の機会も数多く設けている。
  「ほかの中学校の1年生と比べると、話す量、聞く量、読む量を圧倒的に多く確保しています。逆にこの時期は、ライティングの指導はあまり行いません。話すことが満足にできない段階では、書くことは相当難しいからです」

図1

  PAGE 16/17 前ページ  次ページ