教育現場の挑戦 [学力向上の取り組み]栃木県佐野市立葛生中学校

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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「満足感の意識調査」で生徒の声を定量化

 「生徒に聞く」姿勢をさらに進めて、「満足感」の定量化をめざして取り入れられたのが、「満足感の意識調査」だ。国立教育政策研究所の調査項目を参考に、「I学習理解の阻害要因」「II個別指導の機会」「III興味・関心・意欲」「IV学習態度」の四つの観点から質問用紙を作成(図2)。生徒に回答を求めた。集計法は、「よくある(3点)」~「まったくない(0点)」として、四つの観点ごとに素点を集計し、各20点満点に再計算。四つの得点を合計し、80点満点の満足度を全教科で算出した。これにより、教科ごとに満足度を定量化できた。この意識調査では、教師一人ひとりの授業の評価が明らかになるが、授業をよりよくしていくために、教師全員の協力を得ることができた。
図2 満足度の意識調査
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年に2度、全生徒を対象に実施し、集計している
  更に、四つの観点ごとに、「意識調査」の結果を「単元末確認テスト」などの結果とクロス集計。二つの得点の相関を見るグラフを作成している(図3)。例えば、グラフの分布が左下から右上にかけてまとまっていれば、満足度と成績の相関は高いといえる。また、全体に右側に集中するようなら、成績にかかわらず満足度が高いとわかる。
図3 満足感の意識調査の分析グラフ
図3
 Aさんは「テストの得点は低いが個別指導の機会が多い」、Bさんは「テストの得点は高いが個別学習の機会に恵まれていない」と感じていることがわかる
  このグラフを効果的に生かすために行われているのが、「授業改善シート」の活用だ(図4)。これは、各教師が自分の教科のグラフをもとに、例えば「得点は高いのに興味・関心・意欲は低い」「学習理解の阻害要因は低いのに得点は低い」といった、本来の相関関係と外れた生徒がいないか発見するもの。
  これをもとに、「学習カード」の内容も参考にしながら、日々の授業でだれに対してどのような指導改善をしていくか、「個」に注目しながら考えていくことができる。
図4 授業改善シート
図4
 各教師が自分の教科の様子を記入し、それを持ち寄ってクラスごとにまとめることで、教科間の連携を図りながら授業に生かしていける
  更に、毎月1回実施している教科部会に持ち寄り、クラスごとにまとめてみることで、複数の教科で連携を図りながら個に応じた指導を行うことも可能になった。この教科部会は通称「垣根のない教科部会」と呼ばれ、葛生中学校の実践に大きな役割を果たしている。小規模の葛生中学校では1教科に教師1人ということも珍しくなく、ともすれば指導も自らの殻にこもりがちになる。それを乗り越えるために各教科の教師たちが集まり、教科の垣根を越えて授業改善のアイデアを出し合うのが目的だ。
  他教科の教師から自分の教科のことに口を挟まれるのは決して愉快なことではないだろうが、それを打破するきっかけとなったのが、野村先生のある行動だった。
  「彼はほかの先生に『私の授業を見に来てください』と積極的に声をかけ、なかなか来てくれないとわかると、何曜日はだれと決めて全教師に参加してもらっていました。そして意見を聞き、『あなたもほかの人に見てもらってよろしいですか』とお願いする。そんなことを通じて、少しずつ輪が広がっていきました」(神山校長)
  そうして生まれた「垣根のない教科部会」では、満足感を高めるための具体的な手だてを持ち寄り、検討を加えていった。例えば、生徒の五感に訴える実物教材の効果が共有され、2年生数学の関数の授業では、実際に線香を燃やすことで「知的好奇心」を刺激しながら、燃え尽きるまでの時間を数学的に求めさせている(写真2)。社会科の授業で学習内容に関連したものを「はてなボックス」の中に入れ、手探りで触らせるのも、他教科の先生との話の中から生まれたアイディアだ。
写真2
写真2 実際に線香を燃やすことで、生徒の知的好奇心が高まる(2年生数学)

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