教育現場の挑戦 意欲を高める「学校」づくり

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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生徒同士の信頼関係・教師との信頼関係が積極性を生む源に

  四つの目標の中で、特に「信頼関係」づくりは入学当初のかかわり方に工夫をしている。生徒同士、先生と生徒の信頼関係をいかに築いていくかがポイントになる。城東中学校は四つの小学校から生徒が集まるため、新しい学校生活になかなか馴染めない生徒も少なくない。そこで、1年生の4月に宿泊学習を行っている。
  「本校では、宿泊学習を仲間づくり・集団づくりに絞ったプログラムで実施しています。入学間もない時期に行うことで効果を高めています」(不破純二校長)
  教師は、同じ小学校の出身者同士で固まらないように助言するなど、学級や学年の中の仲間意識を広げ、高めていく。これが、城東中学校の集団づくりの基礎となっている。
  また、一日1ページの自学ノートを担任に提出することになっている。その中にお互いのコメントを記入するので、先生は生徒の気持ちを知ることができる。毎日のコメントを返すことは大変だが、信頼関係の醸成に役立つ。
  そして、四つの目標とする力すべての育成に関して大きなポイントとなるのは、「縦の交流」を通して3年生が下級生の「憧れ」や「手本」になることだ。まず、よさこいソーランで新入生を迎え、憧れを演出している。また、体育大会は学年縦割りのクラス対抗戦とし、3年生がリーダーとなって下級生をまとめ勝利をめざす。更に、応援のしかたなどは手本を示し、下級生に丁寧に教えていく。そうした活動を通じて人間関係が深まっていき、下級生は「先輩に負けないような3年生になりたい」と目標ができる。部活動ではよくあることだが、城東中学校は学校行事などを活用して、3年生を手本とする場面を設定しているのだ。
  こうした活動の裏には、教師側の指導の工夫がある。例えば、体育大会の場合、学年を超えた縦割りチームで競う種目を設定し、その競い方を生徒に考えさせ、3年生がリーダーシップを取れるようにした。
  「どの競技も、全員で練習するほど完成度の高くなるものばかり。自然と練習にも熱が入り、まとまりを強くしていったのです」(不破校長)
  このように、さまざまな行事や日常の生活の中で、それぞれの生徒が主体的になる場が用意されている。生徒たちは、生徒会の活動や体験学習の場で、今までにない活躍を見せることがある。その瞬間を教師が見逃さずに、その生徒に着目する。教師が、常に「城中生」を育てることを意識しているからこそできることだろう。
  城東中学校の活動の集大成が、2月に行われる前述の「橋渡し集会」だ。(写真2)。1、2年生からはよさこいソーランが、3年生からは合唱が披露される。どちらも「生徒も教師も体が震えるほど感動する」(不破校長)ものだそうだ。メインは、3年生が1、2年生へ蕫伝統の灯﨟を引き継ぐ「かけはしの灯」。生徒会・委員会・部活動それぞれの3年生がろうそくに伝統を託し、後輩にメッセージを伝えていく。会の終盤では、下級生から「3年生、最高!」という掛け声も飛ぶという。
写真2
写真2 「橋渡し集会」で伝統の灯が3年生から1、2年生に手渡される。こうした行事を継続していくことで、城東中学校の校風も受け継がれていく

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