地方分権時代の教育行政 千葉県野田市

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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職場体験を通して生徒の主体性が芽生える

 第二中学校の職場体験では、生徒自身に企業との面談予約から、勤務の詳細の打ち合わせ、実際の就業まで、一貫して任せられている。企業に失礼のないよう、また生徒に有意義な職場体験を積ませるため、挨拶のしかたや電話のかけ方、手紙の書き方など、徹底した事前指導を行った。
  「今の子どもたちは、自分の気持ちや考えを他人に伝えることが苦手です。地域社会の人とのコミュニケーションを通して、本校の目標の一つである『礼儀正しく、思いやりの心を持つ生徒』の育成にもつながると考えています。市教委のあと押しで有意義な取り組みとなりました」(鈴木校長)
  実際、職場体験後には、掃除のしかたも見違えるように変わる。学校行事にも主体的に取り組むようになり、9月の体育祭に備えて、夏休み中から自主的に応援練習をする光景も見られるようになった。2学年主任の塩沢隆先生は「文章の書き方も大きく変わった」と言う(図2)。
  「職場体験前、生徒は受け入れ先に提出する『自己紹介カード』を書きます。最初は単語の羅列で、きちんとした文章になるまで何度も書き直しをさせました。それが、体験後にお礼の手紙を書くときは、書き直しを必要とした生徒はごくわずか。相手の立場を考えるという経験をし、真剣さが増したのだと思います」
  徹底した指導が実り、実施後の企業からの反応も上々だった。受け入れ先の職場内で、社員にもよい意味での緊張感が出てくるなど、職場体験を好意的に受け止めた企業が多かったようだ。アンケートの結果を見ても、9割以上の事業所が「来年も受け入れたい」と回答したという。「地域の子どもは地域が育てる」という合言葉は、生徒の変容と地域の活性化というキャリア教育実践プロジェクトのねらい通り実現し、確実に浸透しているのである。
▼図2 生徒が書いたお礼の手紙
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消防署では、4人の生徒が5日間、消防士の仕事を体験した。ロープの結索訓練や救助訓練、放水訓練などを実際に行ったり、見学したりした

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