特集 コミュニケーションが生まれる授業づくり

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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人間関係の大切さをエクササイズで実感する

 SGEは治療的なカウンセリングとは違い、活動の内容が本などである程度マニュアル化されている。そのため、訓練を受けていなくても実践できる点に特徴がある。本郷中学校においても改革を始めて以来、柴田先生が中心となって定期的にSGEの講習を開き、すべての教師がSGEを実践できるノウハウを身に付けた。ホームルームや道徳の時間、「総合的な学習の時間」などを利用して、図1のような年間計画に基づいて実施される。

図1

  エクササイズの実際の流れは、図2の通りとなる。「グループ構成」を決めたあと、ゲームやクイズ、パフォーマンスなどで「ウォーミングアップ」をし、心をほぐす。

図2

  「絶対におしゃべりをしない」「必ず笑顔で話す」など最低限のルールと共にエクササイズの流れを示す。その際、できるだけ教師が見本を見せることが望ましい。「先生だったらこういうことを書いてもらうと嬉しい」など具体例を挙げたり、感じの良い話し方、聴き方を実演したりもする。そうすることで、生徒に具体的なイメージがわき、エクササイズをスムーズに進めることができるようになる。
  このような準備をしてから「エクササイズ」に入る。エクササイズには、互いに良いところを指摘し合うなど内面に踏み込むものや、互いにヒントを出し合いながら絵や地図を描くといった共同作業的なものなどさまざまだ。
  例えば、「素敵なあなた」では5、6人が一組になり、一人ずつの名前が書いてあるカードに、今日の「あなた」の素敵な部分を書き、隣の人に渡す。褒められることの心地よさを体験することで肯定的な人間関係を深める。また、生徒が月面に着陸した宇宙飛行士となり、母船にたどり着くまでに必要な道具の優先順位をグループで考える「月世界」というエクササイズもある。自分や友だちのものの見方や考え方を知ると共に、グループ全員が合意することの難しさや大切さを学ぶのが狙いだ。
  エクササイズが終わると、感じたことや気づいたことを語り合う「シェアリング」を行う。「全体をまとめてくれたのはAさんだった」「今日のエクササイズで一番嬉しかったのはこんなことだった」など互いの思いを分かち合う。最後は「まとめ」として、教師から今回のエクササイズの意義が改めて確認される。
  「エクササイズに共通するのは、活動を通じて自己を知り、他者への理解を深めることができる点です。そうした活動を一つひとつ積み重ねることで、適切なコミュニケーションが図れるようになるのです」(柴田先生)


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