特集 コミュニケーションが生まれる授業づくり

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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議論や小論文の基礎になる「問答ゲーム」

 言語技術科は、中1から高1までの4年間に週1回行われるプログラムだ。中3までは連続した2時間(90分)、高1は1時間(45分)で学ぶ。
  プログラムは「問答ゲーム」「再話」「要約」「テクストの分析」をはじめ多様な要素で構成される(図1)。それらの大半を1年サイクルで繰り返し、年次を追って扱うテーマのレベルを上げていく。
  いずれの授業も「議論」を中心に展開するのがポイントだ。授業は生徒と教師、あるいは生徒同士の議論によって進み、最後に学んだ内容を作文にまとめて完結する
  「議論には、自分の考えを整理して発信し、更に相手の話に耳を傾けるという言語技術の多様な要素が詰まっています。毎回作文を課すのは、読み取ったことを文章化する能力を重視するからです」(三森所長)
  しかし、中1の初めの段階では、議論はほとんど成り立たないという。何かを質問しても、「何となく」「微妙に」「わからない」といった曖昧な答え以上に理由を見つけられず、自分の意見をまとまった文章で語ることができない生徒が多いからだ。そこで議論の基礎を身につけさせるために、中1の最初の授業では「問答ゲーム」を取り入れている。
  これは、教師が「読書は好きですか」などと質問し、それに対する答えを生徒が返すというゲームだ。いくつかのルールがあり、例えば「私は読書が好きです。なぜなら―」というように、主語・結論・理由をセットで答えることなどが決められている。
  質問は、1人の生徒に対して、3、4回繰り返される。慣れてきたら生徒同士のペアで何度も練習させて、問答ゲームの「型」を覚え込ませる。更にどの授業でも意見を述べさせるときには、必ず問答ゲームと同様に、根拠を示すように指導する。そうすることで、生徒は自ずと意見と根拠をあらかじめセットで考えるようになる。言語技術科を担当する露谷理香先生が生徒の様子を話す。
  「何かを質問すると、聞かれなくても理由を話すクセがついてきます。そういう話し方は相手にも受け入れられやすいので、自然と話すのが好きになり、自分の考えを上手に主張できるようになるようです」
  問答ゲームでの思考は議論だけでなく、小論文やパラグラフ・ライティングなどの下地にもなる。先に結論を述べ、その根拠で肉付けをするという過程が共通しているからだ。
図1

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