第1部 これからの学力調査を考える 学力調査を教育改革の起爆剤に
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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学力調査は子どもの負担にはならない

 既に学力調査を実施している自治体では、全国的な学力調査の実施により、「学力調査が増えて子どもの負担になるのではないか」と懸念するところもあるかもしれません。しかし極端にいえば、毎週、学力調査があってもよいというのが、私の個人的な考えです。
  学力調査は、子どもが必死に思考を巡らせる学習の場です。結果をより上手に活用できれば、学力向上に大きな効果が表れます。「学力調査」と聞くと、構えてしまう方が多いようですが、もっと気軽に、日頃の学習の成果を確かめることができるよい機会と考えれば、前向きな気持ちで臨めるのではないでしょうか。
  学力調査の結果は、各校に対して、児童生徒ごとの状況が把握できるものを返却しますので、成績上位の子は更に伸ばし、下位の子は引き上げるための指針として活用できます。近年、子どもの学力の二極化が進んでいますから、調査結果を生かして学力差に応じた指導を行う重要性は高まっています。
  また、この調査は悉皆ですから、子どもに自らの課題を認識させ、主体的に改善に向かわせる取り組みにも活用できます。
  ただし、一人ひとりに個別のデータを返却する際には、序列化を避けるために、順位や偏差値、得点は出さずに、各問題の正誤と全国的な正答率のみを伝えるなど、各自の学力の実態を把握させ、学習改善や学習意欲の向上につなげていくことが重要になるでしょう。
  大切なのは周りとの比較ではなく、自分がその問題を解く力があるか否かを把握することです。そして、解けない場合は解ける力がつく対策を用意しなければなりません。
  その点、私立校では子どもの学力に応じたさまざまなレベルの補習で対応しています。公立校でも、土曜日や放課後、長期休業などを利用した補習によって、きめ細かなフォローを検討すべきでしょう。
  また、調査結果は客観的なものですから、学校評価の要素としても活用できます。その際には学校による自己評価の根拠の一つとして、結果を公表してもよいでしょう。
  全国的な学力調査は、地方自治体や学校現場の声に常に耳を傾け、見直しを重ねてよりよいものとしていくことを前提にスタートします。今後も議論が重ねられ、年を追って改善されることになるでしょう。さまざまな立場の方がこの調査を積極的に活用し、日本の教育のレベルアップにつなげていかれることを願ってやみません。

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